南アフリカの家庭で愛される揚げパンが「フェットクック(Vetkoek)」です。アフリカーンス語で「太った菓子(fat cake)」を意味する、外はカリッ・中はふんわりした、揚げパン。揚げると中が空洞になり、その空洞にカレー味のひき肉やジャムを詰めて食べるのが定番です。この記事では、フェットクックとは何か、開拓時代にさかのぼる歴史、そして甘くも塩味でも楽しめる食べ方を、出典を確認しながら整理します。
※トップの写真はイメージです。南アフリカの本場のフェットクックそのものとは見た目が異なる場合がありますが、ふくらんだ揚げパンという特徴が共通します。
フェットクックとは何か
フェットクックは、発酵させた生地を油で揚げて作るパンです。アフリカーンス語で文字どおり「太った菓子(fat cake)」を意味します。外はカリッと香ばしく、中はやわらかくもっちり。揚げると生地が大きくふくらみ、中に空洞ができるのが特徴です。
カリブのジョニーケーキ、オランダのオリーボル、メキシコのソパイピージャなどとも似た、世界各地にある「揚げ生地パン」の仲間といえます。屋台や家庭で手軽に作られ、南アフリカではおやつにも軽食にもなる、暮らしに密着した国民的なパンとして親しまれています。
図:フェットクックの特徴
開拓時代にさかのぼる歴史
フェットクックの起源は、19世紀の南アフリカにさかのぼるとされます。1830年代、内陸へと移動したオランダ系入植者「フォールトレッカー(Voortrekkers)」が、長い旅のあいだに持ち運べて日持ちする食べものとして生み出した、と伝えられています。
火さえあれば、最小限の材料で作れる——移動生活のなかで、家族の腹を満たす実用的なパンだったのです。オランダのオリーボルの流れをくむ揚げ生地が、南アフリカの大地で独自の定番に育っていきました。
図:旅の携行食から定番へ
甘くも塩味でも——空洞に詰める食べ方
フェットクックの楽しみは、その空洞にあります。揚げてふくらんだ中の空洞に、いろいろな具を詰めて食べるのです。
塩味なら、カレー味のひき肉(カレー・ミンス)を詰めるのが定番。チーズやハム、ポロニー(ソーセージの一種)をはさむこともあります。甘いなら、はちみつやシロップ、ジャムを添えて。揚げたてをそのままほおばっても十分おいしい——一つで甘いおやつにも、しっかりした軽食にもなる、懐の深いパンです。
図:塩味と甘味の両刀
日本の家庭での活かし方
フェットクックは、オーブンがなくても作れる揚げパンです。日本の家庭でも、ドーナツ感覚で楽しめます。
- 基本はシンプルな発酵生地:強力粉・塩・砂糖・酵母・ぬるま湯を混ぜて、ふくらむまで(約1時間、倍くらいに)一次発酵させるだけ。特別な材料は要りません。
- 油は180℃が目安:揚げ油を180℃ほどに熱し、成形した生地を入れます。うまくいくと、生地が大きくふくらんで中に空洞ができます。低温だと油を吸いやすいので、温度を保つのがコツです。
- 空洞に詰めて楽しむ:揚げたてを割って、カレー味のひき肉や、和風にそぼろ、あるいはあんこやジャムを詰めても。甘・塩どちらでも合う懐の深さが魅力です。
- 小ぶりに作ると食べやすい:大きいと中まで火が通りにくいので、小ぶりに成形すると失敗しにくく、いろいろな具を試せます。
油の温度と揚げ時間は、生地の大きさで変わります。表面がきつね色になっても中が生のことがあるので、最初は小さめで火の通りを確かめてください。
