パン作り

二次発酵は常温で何分?|パンの種類×季節の目安表

2026年09月03日 読了時間 約8分
二次発酵は常温で何分?——嬉兆のオリジナル図版

レシピには「二次発酵35℃で30分」と書いてある。でも家に発酵器はないし、台所の温度計は今日28℃、先週は14℃だった。

この「常温で何分?」に、ひとつの答えはありません。二次発酵の時間は、パンの種類とその日の室温で、二倍にも三倍にも変わるからです。この記事では、食パン・バターロール・ベーグル・ハード系の四つを夏・春秋・冬の室温別に並べた目安表と、時計よりあてになる生地の見きわめ方を紹介します。

常温での二次発酵、パンの種類×季節の目安表

先に表を出します。室温は夏28℃前後、春と秋は22℃前後、冬は15℃前後を想定しました。公開されているレシピの温度帯と、あとで触れる温度と発酵速度の関係から組んだ目安です。数字は出発点で、着地はいつも生地の状態のほうにあります。

パンの種類 夏(室温28℃前後) 春秋(室温22℃前後) 冬(室温15℃前後)
食パンなど型に入れるパン 50〜70分 70〜100分 120分以上
バターロールなど小型のソフト系 30〜45分 45〜70分 90〜120分
ベーグル 10〜20分 15〜25分 25〜40分
ハード系(バゲットなど) 20〜30分 30〜45分 50〜80分

たとえばバターロールなら、夏の28℃で30〜45分。同じ生地が22℃では45〜70分になり、15℃の台所では90分から2時間まで伸びます。型に入れる食パンはさらに長く、夏でも50〜70分、春秋で70〜100分、冬の常温だと2時間を超えてきます。逆にベーグルは夏なら10〜20分、春秋で15〜25分、冬でも25〜40分。ハード系は夏の20〜30分から、春秋30〜45分、冬で50〜80分あたりです。

幅が広いのは、ごまかしではありません。同じ室温でも、生地の温度、イーストの量、成形でどれだけガスを抜いたかで、ここまで動きます。

温度が10℃下がると、発酵はおよそ半分の速さになる

表の数字がなぜこう動くのか。発酵の速度は、温度が10℃上がるとおよそ2倍になる、という関係でよく語られます。裏返せば10℃下がれば半分の速さ。時間で言えば、倍かかるということです。

室温だけで二次発酵をとった記録を見ても、夏の台所なら30分ほどで頃合いだった生地が、室温20℃では60分かかっています。ちょうど倍。冬の15℃まで下がれば、そこからさらに1.5倍ほど見ておくことになります。

もうひとつ、見落としやすいのが生地そのものの温度です。冬は粉も水もボウルも冷えていて、こね上がった時点ですでに低い。室温が同じでも、冷えた生地は動き出しが遅れます。こね上げ温度の目安はハード系で26〜28℃、食パンや菓子パンで28〜30℃。冬にレシピどおりの時間で切り上げて膨らまないのは、たいていここです。

パンの種類で、ゴールの形がちがう

  • 食パンなど型に入れるパン:型の8〜9割まで生地の山が上がったところ。時間ではなく高さで見る
  • バターロールなど小型のソフト系:ひとまわり大きく、1.5〜2倍。表面がふっくら張ってくる
  • ベーグル:膨らませないのが狙い。短く切り上げるほど、むちっと詰まった歯ごたえになる
  • ハード系:低めの温度で短めに。ここで出し切ると、窯の中で伸びる余力が残らない

ソフト系は温度高めで時間長め、ハード系は温度低めで時間短め。この対比を覚えておくと、レシピの数字が急に読めるようになります。実際、ソフト系は30〜35℃で50〜90分、ハード系は20〜28℃で20〜45分という幅で語られ、カンパーニュのような大型のパンは3〜6時間かける作り方もあります。

ベーグルについては、二次発酵の時間を10分刻みで変えて焼き比べた記録があって、これが面白い。50分でふわもち、40分でもっちりふんわり、30分でもっちり、20分でむっちり、10分でムチムチ、0分ならムチッムチッ。正解がひとつではなく、好きな歯ごたえを時間で選べる、ということです。

時計より確かなのは、指の腹ひとつ

二次発酵の終わりは、結局のところ指で決まります。人差し指の腹で、生地の目立たないところ、側面のあたりをそっと押してみてください。

  • 跡がすっと戻って消える:まだ足りない。もう少し置く
  • ゆっくり戻って、跡がうっすら残る:ここが完了
  • 跡がくっきり残る、押した拍子にしぼむ:行きすぎ。すぐ窯へ

力はいりません。指の重みで沈むくらいで十分です。強く押すと、そこだけガスが抜けて跡が残り、判断を誤ります。一次発酵で粉をつけた指を突き刺すやり方とは別物で、二次は成形した表面を壊さないよう、なでるように触ります。見きわめの手順そのものはフィンガーテストの完全ガイドにまとめました。

そもそも一次と二次でそれぞれ何を狙っているのかが曖昧だと、この判断はぶれます。パンを二度ふくらませる理由もあわせてどうぞ。

常温発酵の敵は、時間より乾燥

発酵器を使わない常温発酵でいちばん多い失敗は、時間切れではなく乾燥です。二次発酵の湿度は70〜80%あたりが目安とされますが、台所の空気はふつう、そこまで湿っていません。

  • 固く絞った濡れ布巾をかける。生地に触れないよう、コップなどで持ち上げる
  • 天板ごと大きなポリ袋に入れ、口を軽く閉じる
  • 衣装ケースや発泡スチロールの箱に、湯を入れたカップと一緒に入れる
  • 直射日光とエアコンの風の通り道は避ける

表面が乾いた生地は、そこだけ膜になります。焼くと伸びたい場所が伸びられず、思わぬ方向に裂ける。手をかざして、しっとりしていればそれでいい。

それと、予熱の時間を勘定に入れておくこと。オーブンが温まるまでの十数分も、生地は発酵し続けています。表の時間から予熱ぶんを引いて、少し手前で切り上げるくらいがちょうどいい。

つまずきやすい場所と、その直し方

  • 時間どおり置いたのに膨らまない:室温か生地が冷えています。湯を張ったボウルの上や、オーブンの発酵機能で温度を作る
  • 夏、目を離した隙に緩みきる:押すとしぼむのは行きすぎの合図。仕込み水を冷やしてこね上げ温度を下げ、15分刻みで見る
  • 焼くと腰が折れる:二次発酵が長すぎます。次は跡が残りきる手前で窯へ
  • 窯の中で思わぬ方向に裂ける:乾燥か発酵不足。覆いを見直して、あと10分置いてみる
  • 冬、型物が2時間経っても8割に届かない:常温にこだわらず、25〜30℃を作れる場所へ移す

表の数字は、台所の扉を開ける前の予報です。予報は外れます。外れたときに頼れるのは、押した指がゆっくり戻ってくる、あの感触のほうです。

参考情報源

  • A DEMAIN ア ドゥマン:温度が10℃上がると発酵速度が約2倍という関係、二次発酵の温度帯と時間、湿度の目安
  • 友達のパン:ソフト系とハード系で最終発酵の温度・時間がどう逆になるか、大型パンの例
  • Yuccoのパン:室温20℃で二次発酵に60分かかった実測と、夏の室温との比較
  • 富澤商店 Column:ベーグルの二次発酵時間を10分刻みで変えた焼き比べと食感の違い
  • ABC Cooking MARKET:型の8〜9割という完了の目安と、指で押したときの三つの判定
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