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クルッキー旋風—パリ発「クロワッサン×クッキー」が世界の朝を変えた理由

2026年06月16日 読了時間 約11分
フランス発のクロワッサン(クルッキーの土台となる生地)

朝、ベーカリーのショーケースの前で「今日はクロワッサンにしようか、それともクッキーにしようか」と迷った経験はありませんか。バターの層がはらりと崩れる軽さも捨てがたいし、外はカリッ・中はしっとりのクッキーの甘さも恋しい。どちらか一方を選ぶのは、いつだって少し惜しいものです。

その「どちらも食べたい」という素朴な欲望に、パリのあるブーランジェリーが堂々と応えてしまいました。名前は「クルッキー(crookie)」。クロワッサン(croissant)とクッキー(cookie)を文字どおり一つにした、見るからに背徳的なお菓子です。今日はこのクルッキーがどこで生まれ、なぜ世界中のスマホを席巻したのか、そして家庭のオーブンでどう再現すればいいのかを、事実とコツの両面からじっくりご紹介します。

クルッキーはどこで生まれたのか

クルッキーを世に送り出したのは、パリ9区シャトーダン通りのブーランジェリー「Maison Louvard(メゾン・ルヴァール)」です。オーナーシェフのStéphane Louvard(ステファヌ・ルヴァール)氏が2022年に考案したと、France24(AFP配信)やSCMPなど複数の海外メディアが報じています。

きっかけは、ごく日常的な厨房の光景だったとされます。クロワッサンを仕込む傍らで、スタッフがチョコチップクッキーの生地を作っていた——その二つを組み合わせてみたら、というわけです。当初は「常連さん向けのちょっとした遊び」程度のものだったとLouvard氏は振り返っています(France24/AFP)。それが数年後に世界的な現象になるとは、本人も予想していなかったようです。

TikTokが火をつけた拡散の経緯

転機は2024年初頭にやってきました。パリのレストラン情報を扱うInstagramアカウントが取り上げて売上が伸び、続いてTikTokインフルエンサーのJohan Papz氏がクルッキーにかぶりつく動画を投稿。この1本が約270万回再生されたと報じられ(Reporter Gourmet)、店頭には連日行列ができるようになりました。

人気は数字にも表れています。バズ後の製造数は1日あたり1,000〜1,600個に達したとされ(BSS News/AFP)、価格は店内で食べると€7、テイクアウトで€5.90と報じられています(Reporter Gourmet)。模倣は本国にとどまらず、ブリュッセル、ニューヨーク、テルアビブ、シンガポールなど各地でクルッキーが見られるようになりました(France24/AFP)。

🌍 パリ発・クルッキー拡散マップ 2022 パリ9区 Maison Louvard 2024.2 TikTok約270万再生 バズ後 1日1,000〜1,600個 世界へ NY・蘭・星 各地に拡散

興味深いのは、考案者本人が特許の取得に乗り気でないことです。Louvard氏はAFPの取材に対し、特許について「世界の半分を相手に裁判でもしろというのか」という趣旨で一蹴したと伝えられています(France24/AFP)。「クロワッサンにクッキーが入っているだけ」という気負いのなさが、かえって世界中の作り手に自由なアレンジを許し、ムーブメントを後押ししたのかもしれません。

クルッキーの構造と「二度焼き」の意味

クルッキーの正体は、思いのほかシンプルです。一度焼き上げたクロワッサンに切り込みを入れ、内側にクッキー生地を挟み、さらに上面にもクッキー生地を塗り広げて、もう一度オーブンで焼く——この「二度焼き」が肝心です。

なぜ焼き上がったクロワッサンを使うのか。生のクロワッサン生地から作ろうとすると、層を支えるバターが溶けて発酵・焼成のタイミングがクッキー生地と噛み合わず、両者の良さを同時に出すのが難しくなります。完成したクロワッサンを土台にすれば、層のサクサク感を保ったまま、上に乗せたクッキー生地だけを短時間で焼き固められるわけです。仕上がりは、外側のクッキーがカリッと、層の内側はクッキー生地がとろりと半生——この食感のコントラストこそがクルッキーの真骨頂です。

🥐 クルッキーの断面構造 上面:カリッと焼けたクッキー生地 層の中:とろりと半生のクッキー 土台:サクサクのクロワッサン層

家庭で挑むなら、海外レシピでは概ね175℃前後(350°F)で10〜15分という焼成が目安として紹介されています。ただしクッキー生地が完全に固まる手前、表面のツヤが消えて縁が色づいた頃に取り出すのがポイントとされます。焼きすぎると「とろり」が失われてしまうためです。

♨️ 「二度焼き」のしくみ 🥐 ① 焼成済み クロワッサンを 土台に使う 🍪 ② 生地を重ねる 内側に挟み 上面にも塗る 🔥 ③ もう一度焼く 175〜180℃で 10〜12分

日本の家庭での活かし方

市販のクロワッサンと、混ぜるだけのチョコチップクッキー生地があれば、日本の家庭オーブンでも週末の朝に再現できます。ここでは手に入りやすい材料で作る編集部アレンジをご紹介します。

材料(クロワッサン4個分)

  • 市販クロワッサン … 4個(前日のものでも可。むしろ少し乾いている方が生地が染みにくく扱いやすい)
  • 無塩バター … 60g(室温に戻す)
  • きび砂糖(または上白糖)… 50g
  • 卵 … 1/2個(溶いておく)
  • 薄力粉 … 90g
  • ベーキングパウダー … 小さじ1/4
  • 塩 … ひとつまみ
  • チョコチップ(製菓用) … 60g
  • 仕上げの粉糖 … 適量

作り方

  1. オーブンを180℃に予熱する。バターと砂糖を白っぽくなるまで練り混ぜ、溶き卵を少しずつ加える。
  2. 薄力粉・ベーキングパウダー・塩を合わせてふるい入れ、ゴムベラでさっくり混ぜる。チョコチップを加えてまとめ、クッキー生地を作る。
  3. クロワッサンに横から切り込みを入れ(切り離さない)、内側にクッキー生地を大さじ1ほど挟む。
  4. 上面にも残りの生地を薄く塗り広げ、チョコチップを数粒散らす。天板にオーブンシートを敷いて並べる。
  5. 180℃で10〜12分、上面の生地がふくらんで縁が色づいたら取り出す。中央が少しやわらかいうちが食べ頃。
  6. 粗熱を取り、粉糖をふって完成。温かいうちはとろり、冷めるとサクッと——二通りの食感を楽しめます。

道具のコツとして、クッキー生地を均一に塗るにはL字のパレットナイフが、チョコチップやバターを正確に量るにはデジタルクッキングスケールがあると失敗しにくくなります。焼き色が付きやすいので、オーブンシートの上に並べ、焦げそうなら途中でアルミホイルを軽くかぶせると安心です。市販クロワッサンは塩気のあるバター系を選ぶと、クッキーの甘さと好相性です。

まとめ

クルッキーはパリ9区のMaison Louvardでステファヌ・ルヴァール氏が2022年に生み出した、クロワッサンとクッキー生地のハイブリッドです。2024年のTikTok動画をきっかけに世界へ広がり、最盛期には1日1,000個超を売り上げたと報じられています。構造の核心は「焼いたクロワッサンにクッキー生地を重ねて二度焼きする」こと。家庭でも市販クロワッサンと簡単なクッキー生地、180℃のオーブンがあれば、外カリ・中とろの食感を週末の朝に再現できます。選べないなら、両方いただく——その潔さこそがこの一品の魅力です。

参考にした情報源

  • France24 / AFP「The Crookie: the French pastry craze that took over TikTok」 https://www.france24.com/en/live-news/20240404-the-crookie-the-french-pastry-craze-that-took-over-tiktok
  • South China Morning Post「How the crookie, a cookie-croissant hybrid, took over TikTok」 https://www.scmp.com/lifestyle/food-drink/article/3257898/how-crookie-french-cookie-croissant-fusion-took-over-tiktok-become-latest-insane-bakery-trend
  • Reporter Gourmet「Crookie: The Croissant-Cookie Hybrid Taking Paris by Storm」 https://reportergourmet.com/en/products-and-companies/438-crookie-the-croissant-cookie-hybrid-taking-paris-by-storm-on-social-media-7-but-worth-every-penny
  • BSS News「The Crookie: the French pastry craze that took over TikTok」 https://www.bssnews.net/news/182281
  • Euronews「Goodbye cronut, hello crookie: the new cross-bred croissant everyone’s obsessed with」 https://euronews.com/culture/2024/04/05/goodbye-cronut-hello-crookie-the-new-cross-bred-croissant-everyones-obsessed-with
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