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ベーグルはなぜ「ゆでてから焼く」? ニューヨークとモントリオール 二つの名物

2026年06月29日 読了時間 約9分
ベーグルニューヨーク

ベーグルをかじったときの、あの「むちっ」とした歯ごたえ。表面はつやつやと光り、薄い皮はかすかにパリッ。ふつうのパンとはまるで違うこの食感は、いったいどこから来るのでしょう。

答えは、焼く前にお湯でゆでる(ケトリング)という、ほかのパンにはない一手間にあります。この記事では、ベーグル独特の食感の秘密、東欧から海を渡った歴史、そして「ニューヨーク」と「モントリオール」という二大スタイルの違いを、海外の作り手の記事を読み解きながら紹介します。最後に、日本の家庭で本格的な噛みごたえを出すコツもまとめました。

ベーグルの正体 — ゆでるから「むちっ」となる

ベーグルは、卵もバターも基本的に使わない、水分の少ない引き締まった生地から作られます。リング状に成形していったん熱湯でゆで、それからオーブンで焼く——この順番がすべての鍵です。

ゆでることで生地の表面のでんぷんが先に固まり、つやのある薄い皮ができます。同時に、オーブンの中で生地が伸びすぎるのを抑えるので、あの目の詰まった、噛みごたえのある中身になるのです。

大量生産のベーグルが「ふわふわのパンに穴が開いただけ」になりがちなのは、ゆでる工程を蒸気で代用してしまうから。手作りで本物の食感を出したいなら、このひと手間は省けません。

「ゆでてから焼く」がすべての鍵 💧 熱湯でゆでる 表面が先に固まる つやのある薄い皮 パリッとした口当たり 🥯 目の詰まった中身 むちっとした歯ごたえ

東欧からアメリカ大陸へ — リングパンの旅

ベーグルのルーツは、ポーランドをはじめとする東欧のユダヤ人コミュニティにあります。19世紀末から20世紀初頭、東欧から移民した人々が、故郷のパン作りの技術を新天地に持ち込みました。

興味深いのは、移民した職人が「ポーランドのどの地域で技を学んだか」によって、できあがるベーグルの個性が変わったこと。同じルーツを持ちながら、渡った先で別々に育ったのが、いまのニューヨークモントリオールという二つのスタイルです。

ニューヨークでは1960年代、ユダヤ系パン職人の組合の活動を通じてベーグルが一気に大衆化しました。一方カナダ・モントリオールでは、1919年創業のフェアマウント、1957年創業のサンヴィアトゥールといった老舗が、いまも手で成形し、客の目の前の薪窯で焼く昔ながらの製法を守っています。リング状のパンとしては、当媒体で紹介したポーランド・クラクフの「オブヴァジャネク」とも遠い親戚と言えるかもしれません。

ニューヨーク派 vs モントリオール派 — 何が違う?

同じ「ゆでて焼くリングパン」でも、二つのスタイルは驚くほど違います。

二大スタイル 早わかり比較 🗽 ニューヨーク 🍁 モントリオール 大きめ・ふっくら 塩を入れる 麦芽(モルト)入りの湯でゆでる ふつうのオーブンで焼く 穴は小さめ もっちり&ふんわり寄り 小さめ・薄め・密 塩なし・卵入り はちみつ入りの湯でゆでる 薪窯で焼く 穴は大きめ 甘め&ぎゅっと詰まる

ニューヨークのベーグルは、強力粉に塩を加えた生地で、ゆで湯には麦芽(バーリーモルト)シロップを溶かします。仕上がりは大きめで、もっちりしつつもややふっくら。

対するモントリオールは、生地に卵とはちみつを加え、塩は入れません。ゆで湯ははちみつで甘くし、薪窯で焼くのが流儀。そのぶん小ぶりで、ほんのり甘く、ぎゅっと密度が高く、穴が大きいのが特徴です。香ばしい薪の風味と、白ごま・黒ポピーシードをたっぷりまとった姿が愛されています。

日本の家庭で作る — ニューヨーク派の基本

特別な窯がなくても、家庭のオーブンで十分おいしく焼けます。4個分の目安です。

【生地:4個分】 ・強力粉 …………… 300g(“噛みごたえ”の要) ・水 ………………… 170ml(粉の約57%・少なめが正解) ・ドライイースト …… 4g ・砂糖またはモルトシロップ 10g ・塩 ………………… 5g

【ゆで湯】 ・水 ………………… 1.5L ・はちみつ or モルト 大さじ1 ・(好みで)重曹 …… 小さじ1 ※入れると皮が濃く、プレッツェル寄りに

  • こねる:水分が少なく最初は固くてまとまりにくいですが、それが正解。表面がなめらかになるまでしっかりこねます(強力粉の高いたんぱく質が、あの噛みごたえを作ります)。
  • 一次発酵:温かい場所で約1時間、2倍に。
  • 分割・成形:4等分してかたく丸め直し、指で中央に穴を開けて広げるか、棒状にのばして輪にします。丸めが緩いと、後で表面がシワシワになります。
  • 二次発酵:20〜30分とやや短めに。ゆでるときにしぼまないよう、ふくらませすぎないのがコツ。
  • ゆでる(ケトリング):沸かした湯に入れ、片面60秒ずつ。長めにゆでるほど皮が厚く、より強い噛みごたえに。
  • 焼く:好みでごまをまぶし、230℃に予熱したオーブンで18〜20分、こんがり色づくまで。

> Boiling the fully proofed dough creates that thick and chewy crust.(しっかり発酵させた生地をゆでることで、あの厚く噛みごたえのある皮ができる)

モルトシロップは製菓材料店やネットで手に入りますが、なければはちみつや砂糖で代用できます(本場の独特な風味は控えめになりますが、十分おいしく焼けます)。

よくある失敗と、その直し方

ベーグルでつまずく三つの定番を、原因と対策でまとめました。

3大失敗チェック ① 表面がシワシワ 原因:丸めが緩い 成形時の張りが弱い → 表面を張らせて かたく丸め直す ② 重くて固すぎ 原因:こね不足 薄力粉を使った → 強力粉で なめらかになるまで ③ 平たくしぼむ 原因:発酵させすぎ ゆでる前に膨らみ過ぎ → 二次発酵は短め 早めにゆでる

① 焼くと表面がシワシワになる——成形のときの丸めが緩いのが原因です。生地の表面をピンと張らせるように、かたく丸め直してから穴を開けましょう。きれいに張った生地ほど、シワのないつるんとした焼き上がりになります。

② 重く、固すぎる——薄力粉では噛みごたえが出ず、ただ固いだけになりがち。必ず強力粉を使い、生地がなめらかになるまでしっかりこねてグルテンを育てます。

③ ゆでると平たくしぼむ——二次発酵のさせすぎが原因。発酵が進みすぎた生地はお湯の中でへたってしまいます。「ちょっと早いかな」くらいでゆでるのが、ふっくら仕上げるコツです。

香りまで楽しむ、休日の一個

焼きたてのベーグルを横半分に割ると、湯気とともに小麦の香ばしさが立ちのぼります。むちっとした断面にクリームチーズを塗り、スモークサーモンと薄切りの玉ねぎをはさめば、ニューヨークの朝食の定番「ベーグルサンド」のできあがり。トーストして外側をさらに香ばしくするのもおすすめです。

休日の朝、生地をこねて、ゆでて、焼く。手間はかかりますが、そのぶんお店では味わえない焼きたての一個が待っています。まずは身近な強力粉とはちみつから、あなたの台所でベーグル作りを始めてみませんか。

参考にした情報源

  • King Arthur Baking「How to make your best bagels」https://www.kingarthurbaking.com/blog/2022/02/23/how-to-make-your-best-bagels-tips
  • Wikipedia「Montreal-style bagel」https://en.wikipedia.org/wiki/Montreal-style_bagel
  • Food Republic「What Really Sets Montreal And New York Bagels Apart」https://www.foodrepublic.com/1857157/new-york-montreal-bagel-difference/
  • The Curious Chickpea「Homemade New York Style Bagels」https://www.thecuriouschickpea.com/homemade-new-york-style-bagels/
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