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チリのマラケータ(Marraqueta)— 国民の7割が毎日食べる、パリパリ食感の小型パン

2026年06月28日 読了時間 約7分
チリのマラケータ

朝、チリの街角のパン屋には、焼きたてのマラケータを求める行列ができます。手で持つと、外側は「パリッ」と音を立てそうなほど薄く硬いクラスト。割ると、中はふわりと軽い。バターも油も入っていないのに、なぜこんなに香ばしく、こんなに軽いのか——。

マラケータは、チリでもっとも食べられているパンです。その消費量は、国内の日々のパン消費のおよそ7割を占めるともいわれます。この記事では、マラケータとは何か、その由来と名前、家庭での作り方とつまずきやすい点、そしてチリの暮らしの中での楽しみ方を、参考記事を読み解きながら紹介します。

マラケータとは何か

マラケータは、小麦粉・水・塩・イーストだけで作る、脂肪分を含まないリーンなパンです。材料の少なさはフランスのバゲットによく似ています。

最大の特徴は、クラスト(外皮)が主役であること。薄くて硬く、ガラスのようにパリッと割れる皮の中に、空気を含んだ軽い中身(ミガ)が詰まっています。サンドイッチにするときは、この中身をくり抜いて皮だけを器のように使うことさえあるほど、皮が愛されています。

材料は4つだけ・脂なし・クラストが主役 粉・水・塩・イースト バター/油は不使用 薄く硬いクラスト パリッと割れる 軽い中身(ミガ) 空気を含んでふわり

由来と、ふたつ以上の名前

マラケータが生まれたのは、19世紀末から20世紀初めの港町バルパライソだと考えられています。よく語られるのは、テラン=マラケット(Teran-Marraquett)という姓のフランス人兄弟がこのパンを作り、たちまちチリ中に広まったという物語。フランスにルーツがあることから、「パン・フランセス(フランスパン)」とも呼ばれます。

呼び名はもうひとつあり、「パン・バティード(こねまぜたパン)」とも言います。どの呼び方をするかは地域の出身を映す“合言葉”のようなもので、バルパライソでは特にこだわりがあるそうです。ひと組をいくつと数えるか(4つでひと組か、その半分か)すら、人によって違うというのも面白いところです。

なお、隣国ボリビアでは「マラケータ・パセーニャ(ラパス式)」が2006年に文化遺産に指定されました。チリでも国民食として愛され、2024年には世界のパンランキングで3位に選ばれています。

作り方 — 「中央の溝」が決め手

マラケータらしい姿は、ふたつの生地を並べてくっつけ、中央を深く押し下げて作ります。家庭で作る流れを、参考レシピから整理しました(10個分の目安)。

  • こねる:強力粉1kg・水600ml(粉に対して約60%)・塩18g・ドライイースト15g・砂糖少々。イーストは30〜35℃のぬるま湯で先に溶かしておく。全体がなめらかになるまで10分ほどしっかりこねる(脂がないぶん、グルテンの力で軽さを出す)。
  • 一次発酵:30分ほど休ませる。
  • 分割・ベンチタイム:約100gに分けて丸め、20〜30分休ませる。
  • 成形(ここが本番):生地を2個並べて軽くつなぎ、少し長くする。菜箸や麺棒の柄など細い棒を中央に強く押し当て、深い溝をつける。これで「4つに分かれそうで分かれない」あの形になる。
  • 最終発酵:天板に並べ、表面に薄く油をぬって20〜30分。
  • 焼く:220℃に予熱したオーブンで18〜20分、薄く色づくまで。

成形:2つを並べて中央に深い溝 ①2個を並べる ②中央を棒で深く押す

クラストがガラスのようになる理由

マラケータの命であるパリパリのクラストは、焼き始めの蒸気で決まります。

焼成の最初の10分、オーブンの底に熱湯を張ったトレイを置きます。すると生地の表面が湿った状態に保たれ、皮がまだ硬くならないうちに生地がめいっぱい膨らめます。同時に、表面のデンプンが水分と熱で糊化(こか)し、焼き上がりにあのつやのある、薄くて硬い皮になるのです。脂が入っていないことも、皮を軽く歯切れよくしている理由のひとつです。

焼き始めの蒸気が、パリパリの皮をつくる 熱湯トレイで蒸気 表面が湿る 皮が硬まる前に めいっぱい膨らむ 糊化して ガラス質の皮

よくある失敗と、その直し方

参考にしたレシピが口をそろえて指摘する、つまずきポイントです。

🍞 マラケータ つまずき対策メモ 🍞 中身が詰まって重い → オーブンの温度が低い/蒸気を入れていないのが原因。 皮が早く乾くと、膨らみきる前に固まってしまう。 220℃でしっかり予熱+焼き始めに蒸気を。 🍞 ふくらまない・かたい → イーストを溶かす湯が熱すぎ(45℃超で弱る)か、冷たすぎ。 30〜35℃の「ぬるま湯」を守る。 🍞 皮につやと張りが出ない → 焼成中に数回、霧吹きで表面に水を。 🍞 翌日かたくなった → 脂が入らないぶん老化が早い。焼きたてが一番。 残ったら軽くトーストするとパリッと戻る。

日本の家庭で楽しむには

特別な道具がなくても、マラケータの雰囲気は十分に再現できます。

  • 棒は身近なもので:中央の溝は、菜箸・麺棒の柄・木べらの柄などで代用できます。思い切り深く押すのがコツ。浅いと焼くとつながってしまいます。
  • 蒸気は霧吹き+熱湯トレイで:家庭用オーブンでも、天板の下段に熱湯を入れた容器を置き、焼き始めに庫内へ霧を吹けば近づきます。
  • 粉は強力粉で:脂がないぶん、グルテンの力が軽さを生みます。よくこねて生地に張りを出しましょう。
  • 食べ方はチリ流で:チリでは朝食や「オンセ」(夕方のお茶の時間)に、紅茶やコーヒーとともに食べます。皮を割って、チーズやハム、そしてアボカド(パン・コン・パルタ)をのせるのが定番。焼きたてを半分に割った瞬間の、あの香りをぜひ。

材料はたった4つ。それでも、こね方と蒸気しだいで表情が大きく変わります。まずは小さく試して、自分の家のオーブンの“ちょうどいい”を見つけてみてください。

参考にした情報源

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