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インドの毎日パン「チャパティ/ロティ」—アタ+水だけ、フライパンでふくらむ無発酵パンの作り方

2026年06月18日 読了時間 約8分
草地に置いたフライパンで焼かれたチャパティ/ロティ

「発酵いらず、材料は粉と水だけ、しかもフライパンで焼ける」——そんなパンが、世界でいちばん多く食べられているフラットブレッドだとしたら驚きませんか。それがインドの「チャパティ(ロティ)」です。イーストも砂糖もバターも使わない。それなのに、焼いている途中でぷっくりと風船のようにふくらむ。今日はこの、インドの食卓に毎日のぼる素朴なパンを取り上げます。

材料がシンプルなぶん、ごまかしがききません。でも逆に言えば、粉と水の扱いさえつかめば、特別な道具がなくても家庭のフライパンで再現できます。チャパティが「何でできているのか」「あのふくらみはどういう仕組みか」を事実でたどったうえで、最後に家庭での焼き方のコツをご紹介します。

材料は「アタ+水」だけ——塩も油も“任意”

英語版Wikipediaの「Chapati」によれば、チャパティは「単層・無発酵(unleavened)のフラットブレッド」と分類されます。基本の材料はアタ(全粒粉)と水のみ。水は粉に対しておよそ60〜80%加えて、なめらかな生地にまとめます。塩は「任意(optionally)」で粉に対し約0.5〜2%、油も加えても加えなくてもよい程度で、どちらも必須ではありません。

そして最大の特徴が、イーストやベーキングパウダーといった膨張剤を「一切使わない」こと。日本の食パンや菓子パンが「発酵でふくらませるパン」だとすれば、チャパティはまったく別の原理で成り立っています。だからこそ、思い立ったらすぐ作れる気軽さがあります。

なお「ロティ」と「チャパティ」の関係は地域によって揺れます。Wikipediaは「チャパティはロティの一種とみなされることも、別物とされることもある」と記しています。おおまかには、ロティが無発酵フラットブレッドの総称、チャパティはその中でも鉄板で乾煎りする代表選手、と整理すると分かりやすいでしょう。

あの「ぷっくり」の正体——プルカ(phulka)

チャパティを語るうえで外せないのが、焼いている最中に生地が風船のようにふくらむ瞬間です。Wikipediaはこう説明します。「チャパティは生地中の水分が蒸気に変わることで膨らむ。これをプルカ(phulka)と呼ぶ」。

手順はこうです。まず油を引かない鉄板(タワ=tava)の上で両面を乾煎りし、半分ほど火を通す。次に、その生地を直火(または熾火)の上に数秒のせると、内部に閉じ込められた蒸気が一気に膨張し、生地がぷうっとふくらむ——これがプルカです。鉄板の段階で表面に小さな気泡が出てくるのは、内部で蒸気が生まれているサイン。塩パンのように層を折り込むわけでも、発酵ガスでふくらむわけでもなく、「閉じ込めた水分が蒸気になる力」だけでふくらむのです。

🔥 チャパティがふくらむ仕組み(プルカ) 🟤 ① 鉄板で乾煎り 油なしで両面を 半焼きに 🔥 ② 直火に数秒 内部の水分が 蒸気に変わる 🎈 ③ 風船状にふくらむ 蒸気が膨張して 生地を押し上げる

アタ(全粒粉)が薄くのびる理由

チャパティを薄く、やわらかく焼く鍵は、粉そのものにあります。BAKERpedia(製パンの技術系食品事典)によれば、アタは普通小麦(パンに使う一般的な小麦)から作られ、伝統的には石臼(チャッキ)で挽かれます。この挽き方では摩擦で粉の温度が上がり、損傷したデンプンが14〜18%(一般的な小麦粉は8〜10%)と多くなる。この損傷デンプンの多さが高い吸水率(72〜78%)を生み、しっとりやわらかいフラットブレッドにつながるとされています。粒度も60メッシュを80〜90%通過するほど細かく挽かれます。

つまりアタは「細かくて、よく水を吸う全粒粉」。日本のスーパーで一般的な全粒粉は、これより粗めのことが多く、同じように作ると少し乾き気味・密な仕上がりになりやすい点は知っておくとよいでしょう。

日本の家庭での活かし方

専用の鉄板(タワ)や直火のコンロがなくても大丈夫。家庭のフライパンでも、コツを押さえればちゃんとふくらみます。ポイントは(1)アタが手に入らなければ全粒粉に少量の強力粉を混ぜて生地に伸びを足す、(2)水分をやや多めに、生地はしっとりやわらかく、(3)薄く均一にのばす、の3点です。デジタルスケールで粉と水をきちんと量ると、毎回同じ生地が作れて失敗が減ります。

🍞 家庭のフライパンで焼く3つのコツ ⚖️ 粉と水を計量 水分やや多め 📜 薄く均一にのばす 厚みのムラを防ぐ 🍳 強火でさっと 気泡が出たら裏返す

材料(4〜6枚分)

  • 全粒粉 150g(あればアタ)
  • 強力粉 50g(生地に伸びを足すため。全粒粉だけでもOK)
  • 塩 ひとつまみ(任意)
  • 水 130〜150ml(生地のかたさを見て調整)
  • サラダ油 小さじ1(任意・生地をしっとりさせたい場合)

計量は1g単位のデジタルスケールがあると、毎回同じ仕上がりに近づきます。

作り方

  1. ボウルに粉類と塩を入れ、水を少しずつ加えてまとめる。耳たぶよりやや柔らかいくらいになるよう水で調整し、なめらかになるまで5分ほどこねる。
  2. ラップをかけて20〜30分休ませる(発酵ではなく、生地をなじませて伸ばしやすくするため)。
  3. 4〜6等分して丸め、打ち粉をしながら直径15〜18cmほどに薄く均一にのばす。
  4. フライパンを強めの中火でしっかり熱し、油を引かずに生地をのせる。表面に小さな気泡が出てきたら裏返す。
  5. 裏面も焼き、ぷっくりふくらんできたら、フライ返しで軽く押さえると全体が風船状にふくらみやすい。ガスコンロなら、半焼きの生地を網にのせ直火に数秒かざすと、本場のプルカに近い大きなふくらみになります(やけどに注意)。
  6. 焼き上がりは乾燥しやすいので、布巾をかけて温かいうちに。カレーやスープを包んで食べると、素朴な小麦の甘みが引き立ちます。

ふくらまなくても味は変わりません。最初はぺたんこでも、生地の水分と火力に慣れるほど成功率が上がります。

まとめ

チャパティ(ロティ)は、アタ(全粒粉)と水を基本に、塩や油は任意で加えるだけの無発酵フラットブレッドで、世界で最も多く食べられているパンのひとつとされます。あの風船のようなふくらみは「プルカ」と呼ばれ、生地に閉じ込めた水分が蒸気になって膨張する力で生まれます。アタは細かく挽かれ吸水率が高いのが特徴ですが、日本では全粒粉に少し強力粉を混ぜ、水分をやや多めに、薄く均一にのばせば、家庭のフライパンでも十分に再現できます。発酵を待たずに作れる手軽さは、忙しい日の食卓の心強い味方になってくれるはずです。

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