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サワードウは「生地温度×膨張率」で測る——米オハイオの独学ベイカーが広める“数字で焼く”発酵術

2026年06月11日 読了時間 約8分

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ガラス瓶の中で発酵し膨らむサワードウ種

サワードウのバルク発酵、いつも「もう少し待つ?それとも切り上げる?」で迷っていませんか。アメリカ・オハイオ州の独学ベイカー、Tom Cucuzza(トム・ククッツァ)さんが広めているのは、勘でも時計でもなく「生地そのものの温度」と「どれだけ膨らんだか(膨張率)」という2つの“測れる数字”だけで発酵を決めるメソッドです。これなら、暑い日も寒い日も、同じ手順で同じ仕上がりを狙えます。「こんな見分け方があったの!」という気づきを、日本の家庭目線も添えてお届けします。

「なぜ膨らむのか」を独学で突き詰めた人

Tom Cucuzza さんは、2019年後半に Chad Robertson の『Tartine Bread』をギフトでもらったことをきっかけにサワードウ作りを始めた、独学のベイカーです。2020年2月にはYouTubeチャンネル「The Sourdough Journey」を開設。拠点は米オハイオ州クリーブランドで、自身の活動を「International Institute for the Advancement of Sourdough Science and Research of Cleveland, Ohio」とユーモラスに名乗っています。

特徴は、その動画スタイル。1本ずつ複数のローフを並べて比べる、長尺の「科学的に再現可能な実験」形式で、家庭でも同じ結果を再現できる詳しさを目指しています。現在50時間を超える指導動画をYouTube上で無料公開し、サイトは広告なし・寄付ベースで運営。サイトには、こんなスローガンが掲げられています。

> Helping ORDINARY people bake EXTRAORDINARY bread > — The Sourdough Journey(thesourdoughjourney.com

「普通の人が並外れたパンを焼けるように」。初心者〜中級者がサワードウの“なぜ(科学)”を理解できるよう手助けすることに、彼は注力しています。

「生地温度×%ライズ」——2つの数字で発酵を決める

彼が開発したのが「Two-Factor(Dough Temping)Method」、そしてバルク発酵の完了判定ツール「Bulk-O-Matic System」です。考え方の核はシンプル。発酵は“室温”ではなく“生地そのものの温度”で進むので、生地温度を測り、その温度に対応する目標膨張率まで膨らんだらバルク発酵を切り上げる——というものです。

目安として彼が示すチャートはこうです。生地が80°F(27℃)なら約30%、75°F(24℃)なら約50%、70°F(21℃)なら約75%膨らんだ時点でバルクを終える。暖かい生地は1時間あたり約20%、冷たい生地は約10%のペースで膨らみ、しかもバルク後の成形・冷蔵中も発酵は続きます。だから速い(暖かい)生地ほど、早めに“ブレーキ”を踏む必要がある、という理屈です。

「2倍になるまで待つ」式の固定ルールがなぜ過発酵を招くのか、これで腑に落ちますね。暑い日と寒い日で仕上がりが変わる理由も、温度差で説明がつきます。

生地温度と膨張率で発酵を「測る」やり方には、信頼できる温度計とスケールが欠かせません。感覚を数字に置き換える相棒を。0.1g単位の計量を習慣にする方法は正確な計量のコツでも紹介しています。



膨張率は「アリコート瓶」で見える化、結果は「クラム」で答え合わせ

「ボウルの中の生地が何%膨らんだか」は、見た目では分かりにくいもの。そこで使うのがアリコート瓶(aliquot jar)です。本体の生地から少量を取り分けて細い瓶に入れ、その膨らみで本体の発酵量を追います。たとえば50mLが75mLになれば膨張率50%。容器の目盛りで一目で読めるので、家庭でもすぐマネできる道具術です。

そして焼き上がったら、断面(クラム=中身の気泡)で答え合わせ。Tom さんはオリジナルの『Sourdough Crumb Reading Guide』も公開しています。発酵不足は背が低く、密に詰まったガム状の中身+トンネル状の穴。ちょうど良い発酵は大中小の穴が均等に分布。過発酵は穴が小さくなり、ピークを過ぎて“肩”が落ちる——。失敗したローフを「なぜ詰まった/なぜ崩れた」と原因究明し、次回は目標膨張率を10%刻みで微調整する。この改善ループが回せるのが、このメソッドの強みです。

日本の家庭での活かし方

このメソッド、実は日本の住環境とこそ相性が良いと、編集部としては感じます。

まず梅雨〜真夏の高温多湿。気温が28℃を超える日も多い日本の夏は、まさに「暖かい生地=早めにブレーキ」のケース。室温まかせだと一気に過発酵に振れますが、生地温度を測って「27℃なら約30%で切り上げ」と数字で止めれば、夏でも崩れにくくなります。逆に冬の底冷えでは生地が70°F(21℃)まで届かず、膨張率も伸び悩みがち。ここで頼れるのがオーブンレンジの発酵機能(28〜30℃設定)や、炊飯器の保温+ふきんでの温度キープです。「時間で待つ」をやめ、「生地温度を一定に保って%で見る」に切り替えると、季節のブレがぐっと減ります。日本の四季に合わせた温度づくりは季節別の発酵温度コントロール完全ガイドが参考になります。

素材面では、日本の軟水国産小麦も計算に入れたいところ。一般に軟水は発酵が進みやすいとも言われますので、生地温度に加えてアリコート瓶での%管理を併用しておくと、進み具合を数字で押さえやすくなります。さらに、国産小麦は品種によってタンパク量や吸水の傾向が変わることがあると言われます(春よ恋・ゆめちから・キタノカオリなどが知られています)。新しい銘柄を試すときは、最初のうちは目標膨張率を低めに設定し、クラムを見ながら10%刻みで詰めていくと安心です。米麹由来の甘酒を少量加えた“和サワードウ”でも、温度×膨張率の物差しがあれば、配合を変えても再現性を保ちやすくなります。

まとめ

🍞 発酵は室温でなく「生地温度」で進む。だから生地温度を測る。 🍞 温度ごとの目標膨張率まで膨らんだらバルク終了(暖かい生地ほど早く止める)。 🍞 膨張率はアリコート瓶で見える化し、結果はクラムで答え合わせ。

「2倍待ち」から「数字で焼く」へ。Tom Cucuzza さんのメソッドは、温度計と小瓶さえあれば今日から試せます。日本の四季と軟水・国産小麦に合わせて自分だけのチャートを育てていけば、梅雨も真冬も怖くありません。まずは次の一回、生地温度を一度測ってみるところから始めてみませんか。

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