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ドイツの趣味パン職人「Ketex」に学ぶ——弱った種を3回で立て直し、粉・水・塩だけでサワー種パンを焼く

2026年06月11日 読了時間 約10分

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瓶の中で発泡するサワー種スターター

冷蔵庫の奥で眠らせてしまい、すっかり元気をなくしたサワー種——。「もうダメかな」とあきらめる前に、ぜひ知っておきたい手順があります。ドイツの趣味パン職人 Ketex(ケテックス) こと Gerhard(Gerd)Kellner さんは、弱ったかけ継ぎ種を、捨て種を最小限にしながら数時間で立て直す方法を、無料で公開しています。しかも市販イーストを一切使わず、粉・水・塩だけで本格的な小麦サワー種パンを焼く「2段法」まで。「これなら続けられる!」「種を別に育てなくてもいいんだ!」という発見を、裏取り済みの事実だけにもとづいてお届けします。

2005年から知られる、ドイツの「趣味パン焼き手」のパイオニア

Ketex という名前で活動しているのは、ドイツの趣味パン職人 Gerhard Kellner さん(愛称 Gerd)です。出版社 Bassermann(Penguin Random House)の紹介文には、こう記されています。

> Seit 2005 hat sich Gerhard Kellner als Hobby-Brotbäcker einen Namen gemacht. > — 出版社Bassermann の著者紹介文(penguin.de

「2005年以来、Gerhard Kellner は趣味のパン焼き手として名を知られるようになった」——2005年から名を知られ、いまも家庭の焼き手に向けてサワー種パンの基礎を発信している人物です。その活動の中心が、サイト「Ketex – Der Hobbybrotbäcker」(ketex.de)。フッターには2026年の著作権表記があり、現在も稼働中で、発酵管理のコツやレシピが数多く無料で読めます。

彼の代表的な著書『Bauernbrote & Brötchen nach traditionellen Rezepturen』(副題:サワー種とイーストで焼くパンの大きな本)は188ページ。かけ継ぎ種(Anstellgut)、製粉の知識、道具、ストレッチ&フォールドといった基礎を扱う「標準的な一冊(Standardwerk)」とされます。最初の著書『Rustikale Brote aus deutschen Landen』(Bassermann、2012年9月刊)について、ドイツの著名パンブロガー Lutz Geißler(Plötzblog)は、家庭の焼き手が再現するのにまったく適した、しっかりしたレシピだと高く評価し、この種のドイツの趣味パン本として、一貫して良いレシピを備えた最初の本だと位置づけたと伝えられています。

弱った種を「3回の連続リフレッシュ」でよみがえらせる

ここからが今日すぐ試したい本題です。Kellner さんが公開する「Hefeführung(種を活気づける手順)」は、とてもシンプルなルールでできています。

弱ったかけ継ぎ種(ASG)大さじ1杯に、小麦またはライ麦の粉50gと水50gを混ぜ、室温(理想は26℃)で5〜6時間置きます。そこからまた大さじ1杯だけを取り、残りは捨てて、再び粉50g+水50gを足す——これを3回くり返してから、本仕込み用の種起こしに移ります。

ポイントは「温度(26℃)」と「回数(3回)」という2つの単純な物差しだけで判断できること。週1回ほどしか焼かない家庭の焼き手でも、これなら種を健康に保てます。そして冷蔵保存のときは、次回用に50〜100gを残すのがコツ。量が少なすぎる(目安100g未満)と種が弱るので、一定量をキープしてあげましょう。

🍞 種大さじ1+粉50g+水50gを26℃で5〜6時間 🍞 大さじ1だけ取り、残りは捨ててまた粉50g+水50g——を3回 🍞 冷蔵保存は次回用に50〜100gを残す

弱った種を立て直す鍵は、毎回同じ配合・同じ温度で継ぐこと。リフレッシュの精度を上げる道具をそろえておくと安心です。

粉・水・塩だけ。種を別飼いしない「2段サワー種法」

もうひとつ目からウロコなのが、市販イーストを使わない「2段サワー種法(2-Stufen-Sauerteigführung)」です。種を別に育てて維持しなくても、毎回の生地から少量を取り分けて次へつなぐ循環式なので、家庭で無理なく続けられます。

おおまかな流れはこうです。まず種づくりとして、小麦粉(Type1050)100g・水65g・種小さじ1(10g)・塩ひとつまみを混ね、室温で一晩→冷蔵で最低48時間(最長2週間)。次に前種(Vorteig)として、その種に粉300g・水180gを混ぜ、室温で16時間、よく膨らんで気泡が立つまで待ちます。最後の本ごねでは、前種に粉600g・ぬるま湯380g・塩18gを加えます。コツは、粉と水を先に混ぜて30〜45分のオートリーズ(自己消化)をとり、そのあと前種をしっかりこねて、塩は最後に入れること。室温で1時間の一次発酵、成形後は26℃で約70分の最終発酵、焼成は250℃で15分→180℃で45分です。仕込み後1時間の生地から150gを取り分けておけば、それが次回の種になります。

イーストに頼らず、粉・水・塩という最小限の材料だけで本格的な小麦サワー種パンが焼ける——しかも種を別管理しなくていい。本格志向の沼勢にこそ刺さる、美しい仕組みだと編集部としては感じます。

日本の家庭での活かし方

この2つの手順、日本の台所に合わせて読み替えると、さらに活きてきます。ここからは取材で確かめられた事実をふまえた、編集部としての応用の提案です。

まず気になるのがでしょう。一般に、日本の水道水は軟水が中心と言われ、ミネラル分の多い硬水とは生地のしまり方が変わってくるとも言われます。だからこそ参考にしたいのが、2段法の「粉と水を先に混ぜてオートリーズをとる」「塩を最後に入れる」という段取りです。これは出典に明記された手順そのもの。やわらかくなりやすい生地でも、まず水和を進めてから塩を加えることで扱いやすくなるはず——と、編集部としては読み替えています。発酵そのものの仕組みをおさらいしたい方は発酵とは?パン作りの基礎知識からどうぞ。

国産小麦との掛け合わせも楽しみどころです。国産小麦には個性豊かな品種が増えていて、製パン向けのものは長時間かけてゆっくり水和させる前種・オートリーズの考え方と相性がよいと言われます。最初は加水を少し控えめに始め、扱いに慣れてから水を増やしていくと安心です。

そして悩ましいのが温度です。Kellner さんが繰り返し示す理想温度は26℃。これは取材で確認できた、はっきりした数字です。日本の梅雨〜夏の高温多湿では、常温でも余裕で超えてしまい、種も生地も一気に進みすぎがち。そんな時季は、種のリフレッシュも本仕込みも、エアコンの効いた涼しい部屋や、必要なら冷蔵を上手に挟んで進度をゆるめましょう。逆に冬の底冷えでは26℃に届かず、種の元気が出にくくなります。ここで頼りになるのが、お使いのオーブンレンジの発酵機能。26℃前後をねらってリフレッシュや最終発酵に使えば、ドイツの理想温度を真冬の日本のキッチンでも再現できます。一定温度をキープしたいときは、温度計を一本そばに置いておくと安心です。季節ごとの温度の作り方は季節別の発酵温度コントロール完全ガイドで詳しく解説しています。

なお Kellner さんは初心者向けに、サワー種へ少量の生イーストを足して発酵を安定させる配合も紹介しています。「天然の素材は毎回反応が違う」という考え方で、見た目の完璧さより味を優先する——この姿勢は、四季のある日本で「毎回ちょっと違う」生地と向き合う私たちにも、そのまま勇気をくれます。

まとめ

Ketex こと Gerhard Kellner さんが教えてくれるのは、「種は難しくない、ルール化すれば家庭でも続けられる」という、とても実用的な哲学です。弱った種は26℃で3回リフレッシュして立て直す。種を別飼いしたくなければ、毎回の生地から150gを取り分けて循環させる。どちらも、特別な機械ではなく「温度・量・回数」という単純な物差しだけで回せるのが魅力です。日本の水や国産小麦、そして梅雨や底冷えという日本の条件に合わせて読み替えれば、20年続くドイツの家庭パンの知恵が、あなただけのオリジナルなサワー種パンへと育っていきます。まずは、眠っている種に粉と水を足すところから——その一歩を、編集部は応援しています。

参考にした情報源

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