スウェーデンの定番おやつといえば、渦巻き状のシナモンロール「カネルブッレ(Kanelbulle)」。英語圏でおなじみのシナモンロールと似ていますが、生地にカルダモンを練り込み、上に粒の大きな砕き砂糖(パールシュガー)を散らすのがスウェーデン流です。この記事では、カネルブッレが生まれた時代背景、その独特の作り、そして「フィーカ(fika)」と呼ばれるコーヒー休憩の文化との結びつきを、出典を確認しながら整理します。
※トップの写真はイメージです(アイシングをかけたシナモンロール)。カルダモンと粒砂糖で仕上げる本場のカネルブッレとは見た目が異なる場合があります。
いつ生まれたのか――20世紀の家庭から広まったお菓子
カネルブッレは古くからある伝統菓子のように思われがちですが、実際にスウェーデンの家庭に広まったのは20世紀に入ってからとされています。第一次世界大戦後、砂糖・卵・バターといった材料が再び手に入りやすくなった1920年代ごろに普及し、各家庭の所得が上がった1950年代に広く親しまれる定番になった、と複数の資料が伝えています(Visit Sweden ほか)。
「ヴァイキングがカルダモンを持ち帰ったのが始まり」といった話を見かけることもありますが、これは裏づけの弱い言い伝えの域を出ません。ここでは確かな事実関係として、「比較的新しい時代に家庭から広まったお菓子」という点を押さえておきます。
図:カネルブッレ普及のおおまかな流れ
カルダモンの生地と、粒砂糖の仕上げ
カネルブッレを「スウェーデンらしく」しているのが、生地に練り込むカルダモンです。さわやかで上品な香りが、シナモンと砂糖(多くはバターも合わせる)のフィリングと重なり、独特の風味を生みます。焼く前には溶き卵を塗り、仕上げに「パールシュガー(pärlsocker)」という、熱でも溶けにくい粒の大きな砂糖を散らします。これが表面のザクッとした食感とつや感のもとです。
形は渦巻き型のほか、ひと結びにした「ノット型」もよく見られます。焼成温度はレシピによって幅がありますが、家庭のオーブンでは高温で短時間(目安として200〜225℃で10〜12分前後)に焼き上げるものが多く、お使いのオーブンの癖に合わせて調整します。
図:カネルブッレの3つの要素
「フィーカ」と、10月4日のカネルブッレの日
スウェーデンには「フィーカ(fika)」という、コーヒーと甘いものを楽しみながらひと休みする文化があります。カネルブッレは、このフィーカに欠かせない定番のお供です。
毎年10月4日は「カネルブッレの日(Kanelbullens dag)」。これは1999年に、家庭でのお菓子づくりを推進する団体(Hembakningsrådet)が制定したものとされ、比較的新しい記念日です(Wikipedia「Cinnamon Roll Day」ほか)。古くからの宗教的な行事ではなく、お菓子文化を祝うために設けられた日、という点が特徴です。
図:フィーカのテーブル
日本の家庭での活かし方
日本のキッチンにある材料でも、スウェーデンらしいカネルブッレにぐっと近づけられます。ふだんのシナモンロールを「カルダモンと粒砂糖」でひと味変えるイメージです。
- カルダモンは仕上げに挽くと香りが立つ:できればホール(緑色のさや)を買い、中の種を使う直前に挽くと、香りが格段に良くなります。粉末でも作れますが、香りが飛びやすいので新しいものを少量ずつ使うのがコツです。
- リッチな生地は冷やして扱う:バターや卵の多い生地は手の熱でだれやすいので、成形しにくいときは一度冷蔵庫で休ませると扱いやすくなります。
- パールシュガーは身近なもので代用:手に入らなければ、あられ糖や粒の大きいザラメ、粗めのグラニュー糖で代用できます。焼いても溶けにくい粒の砂糖を選ぶのがポイントです。
- 緑茶やほうじ茶と「日本版フィーカ」:本場はコーヒーが定番ですが、カルダモンの香りは緑茶やほうじ茶ともよく合います。午後のひと休みのお供にどうぞ。
オーブンの温度はあくまで目安です。焼き色がつきすぎるようなら、200〜210℃に下げて様子を見てください。
