表面が虎の模様のようにひび割れた、つやのある皮を持つパン——オランダの「タイガーブレッド(Tijgerbrood)」です。英語圏では「ダッチ・クランチ(Dutch crunch)」とも呼ばれ、あのパリパリと割れた独特の皮が身上。実はこの模様、米粉で作るペーストを塗って焼くことで生まれます。この記事では、タイガーブレッドとは何か、虎模様ができるしくみ、そして「ジラフ(キリン)パン」と呼ばれるようになった逸話を、出典を確認しながら整理します。
タイガーブレッドとは何か
タイガーブレッドは、オランダ発祥の白いパンです。最大の特徴は、表面に広がる虎(またはキリン)の模様のような、ひび割れたつやのある皮。オランダ語で「Tijgerbrood(タイガーブレッド)」、大きいものは Tijgerbroodje、小さい丸パン版は Tijgerbolletjes と呼ばれます。
中はやわらかく、皮はパリッ。サンドイッチにも、そのままでも楽しめる、食卓の定番パンです。オランダやベルギーのパン屋では古くからおなじみで、近年は英語圏でも「ダッチ・クランチ」の名で人気が広がり、サンドイッチ用の丸パンとして親しまれています。
図:タイガーブレッドの特徴
虎模様ができるしくみ
あのひび割れ模様は、焼く前のひと手間で生まれます。米粉・酵母・砂糖・油・水を混ぜた「米粉ペースト」を、成形した生地の表面に塗ってから焼くのです。
ポイントは、米粉にはグルテンがないこと。米粉ペーストはオーブンの中で伸びずに乾いて固まります。その下で生地はふくらみ続けるため、固まったペーストが引っぱられて割れ、あの虎模様(ひび割れた皮)ができあがるのです。小麦のパンに米粉を組み合わせた、理にかなったしくみです。
図:なぜ割れるのか
「ジラフ(キリン)パン」と呼ばれた逸話
この虎模様、見方によってはキリンの斑点にも見えます。実際、ある逸話がきっかけで「ジラフ・ブレッド(キリンパン)」と呼ばれるようになったことがあります。
イギリスのスーパー、セインズベリーズで、3歳の女の子が「これは虎じゃなくてキリンに見える。虎は縞模様だけど、キリンは斑点でしょ」という趣旨の手紙を会社に送ったところ、商品名が「ジラフ・ブレッド」に変更された——という、ほほえましいエピソードです。同じパンが、見る人によって虎にもキリンにも見える。そんな楽しさも、このパンの魅力です。
図:虎?それともキリン?
日本の家庭での活かし方
タイガーブレッドの楽しさは、なんといってもあの模様づくり。日本の家庭でも、米粉さえあれば挑戦できます。
- 米粉ペーストを用意する:米粉に、少量の酵母・砂糖・油・ぬるま湯を混ぜて、塗れるくらいのペーストにします。これを成形して最終発酵させた生地の表面に、刷毛やスプーンで塗ります。
- 塗ったら少し置いてから焼く:ペーストを塗ってから焼くと、オーブンの中で乾いて固まり、生地がふくらむときに割れて模様になります。厚めに塗るほど、割れ目がくっきり出ます。
- グルテンフリーの米粉を活用:日本は米粉が手に入りやすい国。製菓用やパン用の米粉で十分です。小麦のパンに米粉の皮、という組み合わせを楽しめます。
- 丸パンから試す:いきなり大きなパンより、小さな丸パン(Tijgerbolletjes風)から始めると、模様の出方を確かめやすく、サンドイッチにも便利です。
ペーストの水分量や厚みで模様の出方が変わります。最初はゆるめ・厚めから試して、好みのひび割れを探してみてください。
