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ポルトガル北部のトウモロコシパン「ブロア・デ・ミーリョ」とは|カルド・ヴェルデに添える素朴な一斤

2026年06月14日 読了時間 約9分

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スキレット(鋳鉄鍋)で焼かれたトウモロコシのパン

ポルトガルの北部には、黄金色をした素朴なパンがあります。ずっしりと重く、表面はざらりとしていて、ナイフを入れると中からほのかに甘い穀物の香りが立ちのぼる。これが「ブロア・デ・ミーリョ(broa de milho)」、トウモロコシ粉を主体にして焼かれる郷土のパンです。ふわふわの食パンとは正反対の、噛むほどに味が出る土の匂いのするパンと言えば、その雰囲気が伝わるでしょうか。

ブロアは、毎日の食卓で活躍してきた家庭のパンです。とくに北部では、緑色のスープに添えてちぎりながら食べるのが定番。今日はこのブロア・デ・ミーリョがどんなパンなのか、その歴史や産地、食べ方をやさしくたどりながら、最後に日本の家庭でも作りやすいように編集部でアレンジしたレシピをご紹介します。トウモロコシ粉ならではの素朴な味わいを、ぜひおうちで楽しんでみてください。

トウモロコシが渡ってきた歴史

ブロア・デ・ミーリョは、トウモロコシ粉(コーンミール)を中心に作られるパンです。ただし、トウモロコシはもともとヨーロッパにあった作物ではありません。新大陸、つまりアメリカ大陸からヨーロッパへ持ち込まれた作物で、ポルトガルへ伝わったのは15〜16世紀のことと伝わります。大航海時代に世界中で食材が行き交うなかで、トウモロコシもまた海を越えてやってきたわけです。

では、トウモロコシが来る前のブロアは何で作られていたのでしょうか。実は、それ以前のブロアはおもにライ麦粉で作られていたとされます。新しく入ってきたトウモロコシが各地の畑に広がるにつれ、パンの主役も少しずつ入れ替わっていったのですね。今でもブロアは、トウモロコシ粉だけでなく、ライ麦粉や小麦粉を混ぜて作られることが多く、その配合のなかに長い歴史の名残を感じることができます。

なお、ポルトガル北部のアヴィンテス地方には「ブロア・デ・アヴィンテス(Broa de Avintes)」と呼ばれるライ麦のパンもあり、守るべき伝統的な食として記録されています。ひとくちにブロアと言っても、地域ごとに少しずつ表情が違うのが面白いところです。

産地は北部、寒い土地の恵み

ブロアが日々の食卓に根づいているのは、ポルトガルの北部です。なかでもミーニョ地方(Minho Province)は、ブロアと切っても切れない料理「カルド・ヴェルデ(caldo verde)」の発祥の地として知られています。北部は比較的涼しく、トウモロコシやライ麦、青菜といった素朴な作物がよく育つ土地。そうした土地の恵みが、そのままパンとスープの組み合わせになっているのです。

さらに内陸へ進んだトラス・オス・モンテス(Trás-os-Montes)地方も、トウモロコシ文化が色濃く残る土地です。ここには「ミーリョス・ア・モーダ(milhos à moda)」というトウモロコシを使った郷土料理があり、トウモロコシが暮らしのなかにしっかり溶け込んでいることがうかがえます。山がちで冬の厳しいこれらの土地では、腹もちのよいトウモロコシのパンや料理が、人々の体を温め支えてきたのでしょう。

カルド・ヴェルデに添えて

ブロアのいちばんの相棒といえば、やはりカルド・ヴェルデです。これはジャガイモと、ケールに似た青菜「コーヴェ(couve)」を使って作る、ポルトガルの鮮やかな緑色のスープ。ジャガイモを煮てなめらかにし、そこへ細く刻んだ青菜を加えて仕上げる、シンプルだけれど滋味あふれる一皿です。

このカルド・ヴェルデに、薄く切ったブロアを添えるのが北部の定番です。スープに浸して、やわらかくなったところをほおばる。トウモロコシ粉のほんのりした甘みと、青菜の素朴な風味が口の中で出会うと、それだけでごちそうになります。カルド・ヴェルデは2011年に「ポルトガル美食の七不思議」のひとつにも選ばれたほど愛されている料理で、ブロアはそのかたわらに自然と寄り添ってきました。パンとスープが地域の暮らしのなかでひとつのセットになっている、その関係性こそがブロアの魅力なのです。

日本の家庭での活かし方

ここからは、編集部のアレンジで日本の家庭でも作りやすいブロア・デ・ミーリョのレシピをご紹介します。本場の味そのままではありませんが、トウモロコシ粉・小麦粉・ライ麦粉の3種を混ぜ、湯ごね(escaldão)を中心に据えた、素朴で再現しやすい配合にしました。湯ごねとは、粉に熱湯を注いで先に火を通す下ごしらえのこと。トウモロコシ粉はそのままだとまとまりにくいのですが、熱湯でふやかすことで、しっとりとして扱いやすくなります。

材料(直径18cmほどの丸パン1個分)

  • トウモロコシ粉(コーンミール・細びき)…120g
  • 強力粉…120g
  • ライ麦粉…60g
  • 塩…5g
  • ドライイースト…3g
  • 熱湯(90℃前後)…150ml
  • ぬるま湯(35℃前後)…80〜100ml
  • オリーブオイル…大さじ1

作り方

  1. ボウルにトウモロコシ粉を入れ、90℃前後の熱湯150mlを一気に注ぎ、ヘラでよく混ぜます。これが湯ごね(escaldão)です。粉が熱湯を吸って、もったりとしたかたまりになります。そのまま20〜30分おいて、人肌くらいまで冷まします。
  1. 別のボウルに強力粉・ライ麦粉・塩を合わせておきます。ドライイーストは35℃前後のぬるま湯少量で溶かしておくと、発酵がスムーズです。
  1. 冷ました湯ごね生地に、2の粉類・溶かしたイースト・オリーブオイルを加え、ぬるま湯で固さを調整しながら混ぜます。耳たぶよりやや固めを目安にしてください。トウモロコシ粉が多いのでサラサラとまとまりにくいですが、5分ほど手でこねていくと、少しずつ生地がつながってきます。
  1. ボウルに丸くまとめ、ラップをして温かい場所で60〜90分、ひとまわり大きくなるまで一次発酵させます。
  1. やさしくガス抜きして丸め直し、表面に薄く打ち粉をします。天板にのせて20〜30分の二次発酵。
  1. 200℃に予熱したオーブンで35〜40分。表面がこんがりと色づき、底をたたいて軽い音がすれば焼き上がりです。

湯ごねの仕上がりは温度がカギになります。熱湯が冷めすぎると粉が十分にふやけず、熱すぎるとイーストを傷めてしまうので、温度計があると安心して作業を進められます。

湯ごねの温度を一目で確認したいときは、こちらが便利です。

トウモロコシ粉・小麦粉・ライ麦粉と3種類の粉を使うので、正確な計量がおいしさの近道です。

ふくらみをしっかり出したいときは、発酵を助けるイーストを用意しておきましょう。

焼き上がったブロアは、ぜひ薄めに切ってスープに添えてみてください。ジャガイモと青菜のスープに浸せば、ちょっとしたポルトガル北部の食卓気分が味わえます。

まとめ

ブロア・デ・ミーリョは、トウモロコシ粉を主体に、ライ麦粉や小麦粉を混ぜて焼くポルトガルの郷土パンです。トウモロコシは新大陸から15〜16世紀に伝わった作物で、それ以前はおもにライ麦で作られていたという背景には、長い食の歴史が詰まっています。北部のミーニョ地方やトラス・オス・モンテス地方で大切にされ、緑色のスープ「カルド・ヴェルデ」に添えてちぎり、浸して食べるのが定番です。

ふわふわでも甘くもない、噛むほどに穀物の味が広がる素朴なパン。湯ごねを中心にしたレシピなら、トウモロコシ粉の扱いに慣れていない方でも作りやすいはずです。いつものスープに一切れ添えるだけで、食卓の景色が少し変わります。ぜひおうちで、土の匂いのする一斤を焼いてみてください。

参考にした情報源

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