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イランの石窯パン「サンギャク(sangak)」とは|小石の窯で焼く全粒粉のフラットブレッド

2026年06月15日 読了時間 約8分

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イラン・ニシャプールのバザールで長いサンギャクを抱えて歩く男性

イランの食卓に欠かせないパンと聞いて、ふっくらした丸いパンを思い浮かべると、少し意外に感じるかもしれません。主役のひとつは「サンギャク(sangak)」、全粒小麦で作る大きくて平たいフラットブレッドです。表面には小さなくぼみがぼこぼこと並び、見ているだけでどうやって焼いたのか気になってきます。

その秘密は、焼き方にあります。サンギャクは熱した小石を敷きつめた窯の床で焼かれ、その石が生地に独特のくぼみを残すのです。名前そのものが、ペルシャ語の「石」を語源に持つとされています。今日はこのサンギャクがどんなパンなのか、名前の由来、小石を使う製法、そして現地での食べ方をやさしくたどりながら、最後に日本の家庭のオーブンでも試しやすいレシピをご紹介します。

名前の由来は「石」

サンギャクの名前は、ペルシャ語の「sang(サング=石)」に由来するとされ、「小石」といった意味を持つと複数の情報源が伝えています(出典は記事末尾)。正式には「ナーン・サンギャク(nan-e sangak/نان سنگک)」と呼ばれ、「ナーン」はパンを指す言葉です。つまり名前そのものが、このパンの焼き方を物語っているわけです。

サンギャクは、イランで広く食べられている国民的なパンのひとつとされています。歴史も古く、11世紀の文献にはすでにその記述が見られるとされます。一説には、かつてペルシャ軍の携行食だったとも伝えられ、兵士たちがそれぞれ小石を持ち寄り、野営地でそれを集めて石の窯を作り、軍全体のパンを焼いたという逸話も残っています。事実の細部は幅を持って受け止めたいところですが、石とともに歩んできたパンであることは、その名前がよく示しています。

熱した小石の上で焼く

サンギャクの最大の特徴は、なんといっても焼き方です。生地は全粒小麦粉に水と塩、そして少量のサワー種(サワードウ)を加えたシンプルな配合とされます。これを薄く大きく伸ばし、熱した小さな川石を敷きつめた窯の床に直接のせて焼きます。石はあらかじめ高温に熱されていて、その上で一気に焼き上げるのです。

焼き上がったパンの裏面には、石の形どおりの小さなくぼみが点々と残ります。このぼこぼことした表情こそ、サンギャクがサンギャク(小石)と呼ばれるゆえんです。伝統的な店では、生地を扱う担当と窯を扱う担当が分かれて作業するとも伝えられ、長い板に生地を広げてすばやく窯へ送り込みます。形は三角形や長方形などがあり、表面にケシの実やゴマをのせたものもあるとされます。

煮込みと一緒に味わう

サンギャクは、そのまま食べるだけでなく、料理と組み合わせて楽しまれるパンです。イランでは、ラム肉のケバブを包んだり、フェタチーズやハーブと合わせたりして食べられるとされます。素朴な全粒粉の風味とサワー種のほのかな酸味が、肉や乳製品の濃い味とよく合うのでしょう。

もうひとつ代表的な食べ方が、煮込み料理との組み合わせです。ディーズィー(dizi)やアブグーシュト(abgoosht)と呼ばれる豆や肉の煮込みに、サンギャクを小さくちぎって浸し、汁を吸わせて食べるスタイルが知られています。平たく大きなパンが、スープを受け止める器のような役割も果たすわけです。焼きたての香ばしさと、煮込みを吸ったやわらかさ。ひとつのパンで二つの表情を味わえるのが、サンギャクの楽しさです。

日本の家庭での活かし方

ここからは、編集部のアレンジで日本の家庭のオーブンでも試しやすいサンギャク風フラットブレッドのレシピをご紹介します。本場のような小石の窯はありませんが、海外の家庭向けレシピでは、天板にきれいな石を敷き、ピザストーン(または厚手の天板)の上にのせて高温に予熱し、本場の窯に近づける方法が紹介されています。今回は石なしでも作れるよう、オーブンをしっかり高温に予熱して焼く配合にしました。全粒粉を使うと、本場に近い素朴な香りに近づきます。

材料(直径25cmほどの薄焼き・2〜3枚分)

  • 全粒小麦粉…150g
  • 強力粉…150g
  • 水…200ml前後
  • 塩…小さじ1(約5g)
  • ドライイースト…小さじ1/2(約1.5g)※サワー種があれば一部置き換えてもよい
  • (好みで)ケシの実・白ゴマ…各適量

作り方

  1. ボウルに全粒小麦粉・強力粉・塩・ドライイーストを入れ、軽く混ぜます。
  2. 水を少しずつ加えながら混ぜ、ひとまとまりになったら5分ほどこねます。生地がまとまればOKです。
  3. ラップをかけ、室温で1〜1.5時間ほど、生地が1.5〜2倍にふくらむまで一次発酵させます。
  4. オーブンを最高温度(250℃前後)に設定し、天板(あればピザストーンや厚手の鉄板)を中に入れたまま、20分以上しっかり予熱します。
  5. 生地を2〜3等分し、打ち粉をした台で薄く大きく伸ばします。指で全体にくぼみをつけ、好みでケシの実やゴマをのせます。
  6. 熱した天板に手早くのせ、5〜8分を目安に、ふくらんで薄く焼き色がつくまで焼きます。

塩やイーストはごく少量でも仕上がりに効くので、0.1g単位ではかれるスケールがあると安心です。

本場はサワー種ですが、家庭で手早く立ち上げたいときは少量のドライイーストが頼りになります。

サンギャク風の薄焼きは、オーブンを限界近くまで高温にできるかが仕上がりを左右します。庫内の温度を実際にはかると、焼きムラの原因がつかめます。

小石の窯がなくても、高温で一気に焼く感覚と全粒粉の香ばしさは十分に味わえます。焼きたてを手でちぎり、いつものスープやカレーに浸して食べれば、食卓が一気にイランの雰囲気になります。

まとめ

サンギャクは、全粒小麦粉に水・塩・サワー種を加えた生地を、熱した小石を敷いた窯の床で焼くイランのフラットブレッドです。名前はペルシャ語の「石」に由来するとされ、焼き上がりの裏面に残る小石のくぼみが、その名の通りの表情を見せてくれます。古くは11世紀の文献に登場し、ペルシャ軍の携行食だったとも伝えられる、歴史の長いパンです。

三角形や長方形に焼かれたサンギャクは、ケバブやチーズを包んだり、ディーズィーやアブグーシュトといった煮込みに浸したりして味わわれます。本場の小石の窯がなくても、オーブンをしっかり高温に予熱して焼けば、全粒粉の香ばしさと薄焼きの食感は体験できます。ぜひおうちで、石とともに育ってきたイランのパンの知恵を味わってみてください。

参考にした情報源

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