パン作り

砂糖の多い生地がふくらまない|耐糖性イースト(金サフ)の使いどころと、砂糖量の境目

2026年10月22日 読了時間 約8分
つやのある編み込みのブリオッシュと丸い菓子パン。ひとつ割ると、ふんわりした黄色い中身。脇に砂糖の器
発酵の教科書 第1章 温度と時間この章の記事をまとめて見る(12本)

いつもの丸パンなら1時間で倍になるのに、菓子パンの生地だけ、2時間たってもまだ眠たそう。レシピどおりに量ったのに、なぜか甘い生地だけがふくらまない。そんな経験はありませんか。

犯人は、たいてい砂糖です。少しの砂糖はイーストのごはんになりますが、増えすぎると逆にイーストの動きを止めてしまいます。この記事では、砂糖がイーストを弱らせる仕組みを押さえたうえで、砂糖が粉の何%を超えたら「耐糖性イースト(金サフ)」に替えるか、普通のイーストのまま乗り切るなら何をどれだけ変えるかを紹介します。

ボウルの強力粉と、たっぷりの砂糖・ドライイースト・割った卵を並べたところ
写真はイメージです(嬉兆制作)

砂糖はごはんにも、重しにもなる(浸透圧の話)

パン生地の中で、イーストは糖を食べて炭酸ガスとアルコールを出します。だから砂糖をひとつまみ入れると、立ち上がりがよくなる。ここまではおなじみの話です。

ところが砂糖が多くなると、話が変わります。濃い砂糖水は、まわりの細胞から水を引っぱり出す性質を持っています。ジャムや砂糖漬けが腐りにくいのは、この「浸透圧」で微生物が水を奪われ、増えられなくなるからです。パン生地の中のイーストにも同じことが起きます。砂糖がたっぷり溶けた生地では、イーストの細胞から水が抜け、元気に働けなくなるのです。卵や牛乳、バターが多く、そもそも水の少ないリッチな生地では、なおさらです。

ちなみに塩にも同じ働きがあります。塩を入れ忘れた生地が妙に早くふくらむのは、その裏返しです。

どこからが「砂糖の多い生地」か(境目は粉の5〜15%)

まずは手もとのレシピで、砂糖が粉の何%かを計算してみてください。強力粉250gに砂糖25gなら10%、砂糖50gなら20%です。

業界では、砂糖が粉の5%前後を「低糖」、25%前後を「高糖」と呼ぶことが多く、日清製粉グループのオリエンタル酵母工業も、イーストの性能を「糖配合5〜25%」の範囲で説明しています。では、どこから耐糖性イーストに替えるべきか。ここは販売元によって説明が割れていて、「砂糖5%から」「10%以上」「15%以上」と幅があります。決まった一本の線があるわけではない、と考えてください。

  • 砂糖5%未満(食パン・バゲット系):普通のイーストで問題なし
  • 砂糖5〜10%(甘めの食パン・バターロール):普通のイーストでも焼けるが、発酵はゆっくりになる
  • 砂糖10〜15%を超える(菓子パン・ブリオッシュ・シュトーレン):耐糖性イーストを考えたい領域
同じ時間発酵させた、砂糖の多い生地ふたつ。片方だけ大きくふくらんでいる
写真はイメージです(嬉兆制作)

金サフと赤サフのちがい(耐糖性イーストとは)

家庭でよく見かけるのが、フランスのルサッフル社の「サフ」です。赤いパッケージ(赤サフ)は低糖用で、食パンやハード系の定番。金色のパッケージ(金サフ)は耐糖性で、菓子パンやブリオッシュ、デニッシュ向けとして売られています。

耐糖性イーストは、濃い砂糖の中でも水を奪われにくい性質を持つように選ばれた酵母です。農研機構の研究では、細胞の中に糖の一種トレハロースをため込む力が、砂糖への強さに関わることが報告されています。海外のパン好きが集まるフォーラムでも、シュトーレンを赤と金で同時に仕込んだら金のほうがずっとよくふくらんだ、という声があります。

逆に、砂糖の少ない生地なら赤と金はほぼ入れ替えがききます。金サフだけ買っておけば何でも焼ける、と考える人もいますが、食パンやバゲットが中心なら赤サフで十分です。

普通のイーストで乗り切るなら(量を増やす・待つ)

金サフが手もとにない日でも、菓子パンはあきらめなくて大丈夫です。手は二つあります。

  • イーストを増やす:米国の製菓ブロガーは、砂糖が5%を超えたらインスタントイーストを25%ほど増やす、という目安を紹介しています。レシピが3gなら約4g。増やしすぎるとイーストのにおいが残るので、まずはこのくらいから
  • 時間で待つ:量はそのままで、一次発酵を「時間」ではなく「倍の大きさ」で判断する。28〜30℃前後の暖かい場所に置き、指で押した跡がゆっくり戻るまで待ちます

イーストの量をグラムで量るときは、ドライイースト小さじ1は何グラム?の換算表が便利です。

砂糖の割合(粉に対して) 向くイースト 発酵の見通しと一手
5%未満 普通のイースト(赤サフなど) レシピどおりでよい
5〜10% どちらでも 普通のイーストなら25%ほど増やすか、時間を長めに見る
10〜15%を超える 耐糖性イースト(金サフ) 境目は販売元で5〜15%と幅がある。迷ったら金サフ
リッチな生地(卵・牛乳・バターが多い) 耐糖性イースト 水が少ないぶん浸透圧の影響が強い。暖かい場所で、大きさで判断
つやのある菓子パンを網の上で冷ましているところ。ひとつ割ると、ふんわりした中身
写真はイメージです(嬉兆制作)

甘い生地のつまずき、あるある

  • 時計どおりに進めて、ふくらみきらない:甘い生地はレシピの時間より遅れるのがふつうです。時間ではなく大きさで見ましょう
  • 金サフを冷たい水にそのまま落とした:販売元は、粉に直接混ぜるか、30℃くらいのぬるま湯で溶かす使い方を案内しています。冷水に直接触れさせるのは避けます
  • 砂糖とイーストを並べて置いた:計量した砂糖の山にイーストを直接のせたまま放っておくと、そこだけ水を奪われやすくなります。粉に散らしてから合わせると安心です。とても甘いブリオッシュを焼く人の中には、先にイーストを水に溶かして「先に水を飲ませる」工夫をする人もいます
  • 増やしすぎた:ふくらまないからとイーストを倍にすると、今度は風味が荒れます。増やすのは2〜3割まで、あとは時間に任せましょう

甘いパンの季節に、袋をもうひとつ

これからの季節は、シュトーレンやパネトーネ、クリスマスの菓子パンを仕込みたくなる時期です。砂糖もバターもたっぷりの生地ほど、イーストにとっては厳しい環境。いつもの赤い袋の横に金色の袋をひとつ置いておくだけで、甘い生地の「待ちぼうけ」はぐっと減ります。シュトーレン入門も、あわせてどうぞ。焼き上がったつやつやの菓子パンを割ったとき、ふわっと立つ甘い湯気は、待った人へのごほうびです。

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カテゴリ パン作り
タグ パン作り基礎 発酵

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