パン作り

パンの製法図鑑|ストレート・中種・ポーリッシュ・ビガ・湯種・老麺の選び方

2026年09月21日 読了時間 約7分
パンの製法図鑑(写真はイメージ)

同じ食パンのレシピなのに、頭についている言葉が「中種法」「湯種」「オーバーナイト」とばらばらで、どれを選べばいいのか決めかねる。

製法の名前がこれだけ増えたのは、どれかが正解でどれかが間違いだからではありません。作りたいパンの性格が違うからです。この記事では、ストレート法・中種法・ポーリッシュ・ビガ・湯種・老麺・オーバーナイトの7つを、「性格」「向くパン」「前日の手間」の3点だけで見比べられるように並べます。詳しく知りたい製法には、それぞれの記事へ案内します。

製法は上下ではなく、横に並んでいる

製法を見分ける物差しは、実はひとつしかありません。粉の何%を、いつ、どんな形で先に仕込んでおくか。それだけです。

ややこしいのは「中種法」という言葉で、狭い意味では食パンの中種、広い意味ではポーリッシュやビガを含む発酵種法ぜんぶを指します。記事によって指す範囲が違うので、名前ではなく「粉の何%を先に仕込むのか」を見ると、どの資料を読んでも迷いません。

前日の手間がゼロ|ストレート法

材料をいっぺんに混ぜて、ひと続きで焼き上げる。いちばん基本の作り方です。工程が短いぶん、失敗しても原因がすぐ絞れる。焼きたてを当日食べきるなら、これで十分おいしい。

弱点は、ボリュームが出にくいことと、翌日には固くなりやすいこと。市販の食パンのあのふわふわが家で再現できない理由も、たいていここにあります。中種法とストレート法の違い|市販食パンのふわふわの正体で、その差の正体を追いかけています。

前日にゆるい種を仕込む|ポーリッシュとビガ

粉と水とごく少量のイーストを混ぜて、ひと晩置いておく。翌朝ふたを開けると泡だらけで、かすかにお酒のような匂いが立ちます。

  • ポーリッシュは粉と水が同量。全体の粉の25〜50%を回し、室温で12〜18時間。ゆるい液状
  • ビガは加水55%前後のかたい種。同じく粉の25〜50%を回し、室温で15〜18時間。冷蔵なら3日まで
  • どちらもイーストは種の粉に対して0.25〜1%。ごく少量でいい

ゆるいポーリッシュは気泡が開いて軽く、香りが立つ。かたいビガは密度が残り、噛みしめる甘みが出る。バゲットやチャバタならポーリッシュ、フォカッチャやピザならビガ、というのがおおまかな住み分けです。しくみは中種法(ポーリッシュ・ビガ)の科学に、ピザ生地での使い方はビガで作るピザ生地|前日10分の仕込み方にまとめています。

前日に生地を仕込む|中種法と老麺法

種がゆるい液ではなく、ちゃんとした生地の形をしているのがこの2つです。

  • 中種法は、全体の粉の50〜70%に水とイーストを混ぜて軽くこね、2〜4時間発酵させてから本ごねへ。70%中種がいちばん一般的
  • 老麺法は、前日の生地をひとかけ取り分けて冷蔵し、翌日の生地に混ぜ込む。対粉20〜30%が目安で、10〜40%と幅を持たせる資料もある
  • 老麺の冷蔵保存は3〜5日ほど。1週間を超えるものは使わない

中種法はボリュームとしっとりを稼ぐ製法で、食パンや菓子パンの定番。老麺法は逆に、酸味と甘みの奥行きを一滴たらすような使い方をします。仕込み専用のボウルが要らないのも老麺の強みです。詳しくは老麺法(パート・フェルメンテ)|昨日の生地ひとかけが、明日のパンを深くするへ。ポーリッシュとの性格の違いは老麺とポーリッシュの違いで比べています。

発酵させない種を仕込む|湯種

湯種だけは、仲間はずれです。イーストを入れず、粉に沸かしたての熱湯を注いで練る。小麦のデンプンは65℃あたりから糊になり、冷たい水では抱えきれない量の水をつかまえます。

全体の粉の20%前後を回し、粗熱を取って冷蔵で4時間以上、できればひと晩。翌日の生地はもっちりと引きが出て、焼いたあとも水が残るぶん日持ちします。仕組みは湯種製法の基本|熱湯が生む、もちもちと日持ちの科学に、発酵種との使い分けはポーリッシュと湯種の使い分けにあります。

製法ではなく時間割を変える|オーバーナイト法

これは種を作る話ではありません。本ごねまで済ませた生地を、そのまま冷蔵庫で4〜6℃・8〜24時間かけて発酵させる。常温なら1〜2時間で終わる工程を、まるごと夜に預けてしまう考え方です。

低温では酵母の動きが抑えられ、そのぶん有機酸やアルコールがゆっくり長く生まれる。過発酵しにくいので、見極めの幅も広い。夜に仕込んで朝に焼く段取りはオーバーナイト発酵(低温長時間発酵)の基本で扱っています。

製法 前日の手間 向くパン
ストレート法 なし。当日ひと続き 当日食べきるパン全般
中種法 粉の50〜70%で種を作り2〜4時間 食パン、菓子パン
ポーリッシュ 粉と水を同量で12〜18時間 バゲット、チャバタ
ビガ 加水55%前後のかたい種で15〜18時間 チャバタ、フォカッチャ、ピザ
湯種 熱湯で練り、冷蔵4時間〜ひと晩 食パン、バターロール
老麺法 前日の生地を取り分けて冷蔵 菓子パン、フランスパン
オーバーナイト法 本ごねまで済ませて冷蔵8〜24時間 種類を選ばない

迷ったら、この順番で引く

  • 今日焼いて今日食べる。前日の予定は空けられない。ならストレート法
  • クラストを噛みたい。気泡の開いた軽さが欲しい。ならポーリッシュ
  • 噛みしめる密度と甘みが欲しい。ピザやフォカッチャ。ならビガ
  • ふんわり、翌日もやわらかい食パンが欲しい。なら中種法
  • もっちりした引きが欲しい。ぱさつきが不満。なら湯種
  • いつものレシピに深みだけ足したい。ボウルは増やせない。なら老麺法
  • 夜と朝で作業を分けたい。日中に時間が取れない。ならオーバーナイト法

製法は増える一方に見えて、選ぶ側の問いはいつも同じです。どんなパンを、いつ食べたいのか。そこさえ決まれば、名前のほうから寄ってきます。

参考情報源

  • BAKE WITH PAWS:各製法の粉の割合・加水率・イースト量・発酵時間の一覧
  • こびと:ストレート法・中種法・ポーリッシュ法・老麺法の比較と老麺の割合
  • パン職人の朝は早い:中種法の粉の割合と発酵時間、長所と短所
  • 大正電機販売:オーバーナイト法の冷蔵温度帯と時間、常温発酵との比較
  • Wikipedia(Biga):ビガの来歴と、チャバタなどイタリアのパンでの位置づけ
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