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食パンの水分は何にする?|水・牛乳・スキムミルクで変わるクラムと焼き色

2026年10月02日 読了時間 約8分
食パンの水分は何にする?(写真はイメージ)

牛乳で焼くとおいしいらしい。そう聞いてレシピの水を同じ重さの牛乳に替えてみたら、焼き色は立派なのに、山が上がらなかった。

よくある失敗です。原因は腕でも粉でもなく、算数のほうにありました。牛乳は、水ではないからです。この記事では、仕込み水を水・牛乳・スキムミルク・練乳に変えるとクラムと焼き色がどう動くかを、置き換えの計算とセットで紹介します。

水・牛乳・スキムミルクを溶いた乳。仕込み水の候補を3つ並べたところ
写真はイメージです(嬉兆制作)

牛乳は「水」ではなく「水+乳固形分」

食品成分表を引くと、普通牛乳100gの中身は、水分87.4g、たんぱく質3.3g、脂質3.8g、炭水化物4.8g。ざっくり9割が水で、残りの1割が乳固形分です。

つまり牛乳130gを量っても、生地に入る水は114g前後にしかなりません。レシピの水130gをそのまま牛乳130gに替えれば、加水が1割落ちた生地になる。焼き色は濃いのに膨らまないパンの正体は、これです。

そして残りの1割、とくに炭水化物の4.8gが、あとで焼き色の話に効いてきます。乳固形分は、じゃまものではなく仕事をする側です。だからこそ、水として数えてはいけない。

換算のしかたは単純です。

  • 水を牛乳に替える:水の量×1.1が牛乳の量。水130gなら牛乳143g
  • 牛乳を水に戻す:牛乳の量×0.9が水の量
  • いちど計算してから、最後に水で総量を合わせる

なお、型に対して生地が何グラム入っているかでも膨らみの見え方は変わります。比べるときは生地量をそろえてください。そちらの考え方は食パン型と生地量の決め方にまとめてあります。

水・牛乳・換算した牛乳を焼き比べると

同じレシピで仕込み水だけを変えた比較があります。

水130gで焼いたパンは、全体的に緩んで膨らみ、焼き色は薄め。香りもおとなしい。牛乳130gに単純に置き換えたパンは、生地が締まって膨らみが悪く、焼き色は濃く、ミルキーで甘く香ばしい匂いがする。そして牛乳143gと換算したパンは、生地が引き締まりつつもふんわり膨らんで、焼き色も良好でした。

面白いのは、失敗したはずの「牛乳130g」も、匂いだけは魅力的なことです。だからオーブンの前では成功した気になる。気づくのは、型から出したときの高さでした。

仕込みに使うもの 焼き色 膨らみとクラム 香り
水だけ 薄め 全体的に緩んで膨らむ おとなしい
牛乳を同じ重さで置き換え 濃い 締まって膨らみが悪い ミルキーで甘く香ばしい
牛乳を1.1倍にして置き換え 良好 引き締まりつつふんわり ミルキー
スキムミルク+水 濃い 乳脂肪がないぶんふんわり ミルクのコクが出る

焼き色が濃くなるのは、イーストが食べ残す糖があるから

乳製品を入れたパンの焼き色が濃くなるのには、はっきりした理由があります。乳糖です。

イーストは乳糖を分解する酵素、ラクターゼを持っていません。砂糖なら発酵のあいだに食べ尽くしてしまうところ、乳糖は手つかずのまま焼成まで残ります。残った糖が熱でメイラード反応を起こして、あの濃い焼き色と香ばしさになる。

そしてもうひとつ、乳糖には水分を抱えておく働きもあります。焼き上がりがパサつきにくく、翌日もしっとりしているのはこのためです。

いいことばかりに聞こえますが、入れすぎれば発酵は遅れ、生地はかたくなります。乳製品は「多いほどいい」材料ではありません。

スキムミルクは「乳固形分だけ」を足す道具

スキムミルクは、牛乳から脂肪分と水分を取り除いて乾燥させ、粉末にしたものです。脱脂粉乳とも呼びます。ほとんどが固形分の粉で、水はほぼ入っていません。

だから使い勝手がいい。仕込み水の量に手をつけないまま、乳の風味と焼き色だけを足せます。

  • 牛乳100gの代わり:スキムミルク10g+水90g
  • 風味とコクを足したいだけなら、粉に対して5〜10%
  • 乳脂肪が入らないぶん、牛乳で作るよりふんわり焼き上がる
  • 常温で半年から1年もつ。冷蔵1週間の牛乳とは、別の道具だと考える

スキムミルク10gを水90gに溶かしたものと牛乳100gを比べると、たんぱく質やカルシウムはほぼ同じで、カロリーだけが半分ほどになります。乳脂肪のぶんが抜けているからです。冷蔵庫に牛乳を切らしがちな台所には、こちらのほうが向いているかもしれません。

ただし多ければ多いほどいい粉ではありません。大量に入れると発酵が遅れ、生地が締まります。焼き色がほしいだけなら5%から試して、足りなければ増やす順番が安全です。

水と牛乳とスキムミルクで焼き比べた食パン。焼き色が少しずつ違う
写真はイメージです(嬉兆制作)

練乳を使うなら、砂糖と水の両方を引く

加糖練乳は、牛乳を濃縮して砂糖を加えたものです。糖度はおよそ45%、水分はおよそ25%。半分近くが砂糖で、残りの4分の1が水という中身です。

これをそのまま足すと、甘さも水分も二重になります。練乳を20g入れるなら砂糖を9g、30g入れるなら13.5g減らす。水も、練乳に含まれる水分ぶん仕込み水から引いておきます。

手間はかかりますが、砂糖と乳と保水がいっぺんに入るので、そのまま食べたい食パンには向いた材料です。

しっとりを狙うなら、仕込み水より製法が効くこともある

ここまで見てきたとおり、乳製品は焼き色と風味と保水を同時に動かします。ただ、狙いが「翌日もしっとり」の一点なら、仕込み水を替えるより湯種製法のほうが直接的です。粉のでんぷんを熱湯で先に糊にして、水を抱え込ませてしまう方法です。

牛乳やスキムミルクと組み合わせても、けんかはしません。ただし湯種に使う熱湯は、総水分の内側から引くこと。ここでも順番は計算が先です。

水の食パンと牛乳の食パンの断面。牛乳のほうがきめ細かく焼き色が濃い
写真はイメージです(嬉兆制作)

置き換えでつまずくところと、その直し方

  • 焼き色は濃いのに膨らまない。牛乳を同じ重さで置き換えている。1.1倍に直す
  • 生地がゆるくて成形できない。牛乳を水に戻すとき0.9を掛け忘れている
  • 焼き色がつかない。乳製品が入っていないか少なすぎる。スキムミルクを粉の5%から足す
  • 発酵が進まない。スキムミルクの入れすぎ。量を戻す
  • 甘すぎる。練乳ぶんの砂糖を引いていない。糖度45%で計算する
  • 翌日ぼそぼそになる。乳糖の保水を借りるか、湯種と組み合わせる

仕込み水を何にするかは、好みの問題に見えて、じつは計算の問題でした。牛乳を使いたいなら1.1倍、スキムミルクなら10gと水90g、練乳なら砂糖も水も引く。数字を通してから台所に立つと、次の一斤はもう別の顔をしています。

参考情報源

  • 文部科学省 食品成分データベース:普通牛乳100gの水分87.4gほか、成分の内訳
  • cotta:水と牛乳の換算式と、置き換えを変えて焼き比べた結果
  • cotta:スキムミルクの中身、牛乳との換算、乳糖と焼き色の関係
  • パン作りの教科書:イーストがラクターゼを持たないこと、入れすぎたときの発酵の遅れ
  • Yuccoのパン:加糖練乳の糖度と水分、砂糖を引く量の計算
カテゴリ アウトドア料理 パン作り 初心者ガイド 発酵・基礎知識
タグ パン作り基礎 材料 食パン

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