パン作り

塩パンのバターが漏れる・底が焦げる|巻き方・冷やし方・天板の順に直す

2026年10月31日 読了時間 約10分
塩パンのバターが漏れる・底が焦げる|巻き方・冷やし方・天板の順に直す

オーブンの扉を開けたら、天板の上にバターの池。パンを持ち上げると、巻いたはずのバターはほとんど残っていなくて、底は黒く焦げている。塩パンを家で焼いた人のほとんどが、一度はこの光景に出会います。

先に言っておくと、塩パンのバターは漏れるものです。巻き込んだバターが溶けて流れ、その油で底が揚げ焼きになるのが、このパンの仕組みだからです(塩パンの科学)。直すべきなのは「漏れること」ではなく、「全部漏れて中に何も残らないこと」と「漏れたバターが焦げること」の2つ。この記事では、巻き方・冷やし方・天板の順に、どこで漏れたかを切り分けて直していきます。

細長い三角形にのばした生地の太い端に冷たい棒状バターを置き、ひと巻き目で包み始めたところ
写真はイメージです(嬉兆制作)

まず、どの漏れ方かを見る

焼き上がりを裏返して、割ってみてください。漏れ方は3つに分かれます。

  • 底がきつね色で、割ると中心に空洞がある。天板に少しバターが残っている。これは成功です。漏れたぶんが揚げ油になった、設計どおりの姿です
  • 空洞がなく、中はただのロールパン。天板のバターが多い。バターが生地に溶け込んだか、巻きの外へ早く逃げたかのどちらかで、原因は成形か温度にあります
  • 底が黒く、苦い。漏れた量は普通でも、天板の上でバターが焦げています。原因は天板とオーブンの側です

2つ目は巻き方と冷やし方、3つ目は天板で直します。順に見ていきます。

冷蔵庫で冷やしておいた棒状の巻き込み用バター。一次発酵のあいだに切っておく
写真はイメージです(嬉兆制作)

原因1:巻き方(ひと巻き目と、とじ目で決まる)

塩パンの成形は、細長い三角形にのばした生地の太い端に棒状のバターを置いて巻くだけ。ロールパンと同じ動きです(バターロールの成形)。違うのは、芯に入っているのが溶けて流れるバターだということ。だから、バターをどこで逃がさないかが勝負になります。

  • 最初のひと巻きで、バターを完全に包む。太い端の生地をバターにかぶせ、指でふちを軽く押さえて密着させてから巻き始める。ここに隙間があると、溶けたバターは巻き目をたどらず、いきなり外へ出ます
  • 両端をつまんで閉じる。棒状のバターは両端が開いています。巻き終わったら左右の端を軽くつまみ、バターの出口をふさぐ。三日月形にして両端を内側へ曲げるのも、同じ理由です
  • とじ目は真下。巻き終わりが上や横を向くと、発酵でふくらんだときにそこが開き、バターの通り道になります。とじ目を下にして天板に置き、重みで押さえます
  • きつく巻かない。漏れを恐れて締めると、生地が伸びる余地がなくなって、ふんわりしません。転がすように、力を抜いて巻く。漏れは巻きの強さではなく、ひと巻き目ととじ目で止めます

バターの量も見直す価値があります。1個に6〜10g が標準的な目安で、初めて焼くなら6gから。多いほど漏れる量も増え、漏れすぎると生地にバターが染みず、味も底の香ばしさも薄くなります。

オーブンシートを敷き、とじ目を下にして並べた成形後の塩パン。天板を二重にし、1個は紙カップに入れている
写真はイメージです(嬉兆制作)

原因2:冷やし方(バターは28〜33℃で溶ける)

バターは28〜33℃で溶け、一度溶けると冷やし直しても元の状態には戻りません。塩パンの失敗の多くは、この温度を成形か二次発酵のどこかで超えていることから起きます。夏の台所なら、何もしなくても超えます。

  • 巻き込み用のバターは、使う直前まで冷蔵庫か冷凍庫に。一次発酵のあいだに個数ぶんを棒状に切り、ラップをして冷やしておく。室温に出したまま6個ぶん成形すると、最後の1本は柔らかくなっています
  • 柔らかいバターは巻かない。指で押してへこむバターは、巻いているうちに生地へ溶け込み、空洞も揚げ底も生まれません。へこまない硬さで巻く。漏れが続くなら、冷凍したバターを試す価値があります
  • 二次発酵は30℃前後、35℃を超えない。オーブンの発酵機能を40℃にすると、焼く前にバターが溶け出して、天板に流れます。バターを使う成形パンの二次発酵が低めなのはこのためです。時間は40分前後、ひとまわり大きくなれば十分。ふくらませすぎると生地がゆるみ、巻きが開きます
  • 夏は手早く。成形の途中で生地が温まるなら、半分ずつ冷蔵庫から出して成形する。室温が高い日の材料の扱いは夏の小麦粉・イーストの保存にまとめてあります

オーブンは200℃前後にしっかり予熱し、12〜18分で一気に焼きます。温度が低いと、バターがゆっくり生地に染みて空洞ができず、底も揚がりません。「冷たく巻いて、高温で一気に」が塩パンの基本です。

原因3:天板(焦げるのは、受け止め方の問題)

漏れ方が普通なのに底だけ黒い。これは天板の上で、流れ出たバターが焦げています。バターは水分とたんぱく質を含むので、油より低い温度で色づき、放っておけば苦くなる。焦げを防ぐには、バターを天板に直接触れさせず、下火を弱めるのが基本です。

  • オーブンシートは必須。天板に直置きすると、張り付きと焦げの両方が起きます。アルミホイルは熱を通しやすく、焦げやすいので塩パンには向きません
  • 下段に置いているなら中段へ上げる。それでも焦げるなら温度を10℃下げて時間を少し足す。段が低いほど下火が強く当たり、底の色が濃くなります。底が白い食パンを下段へ移して直すのと(食パンの底が焼けない・白い)、ちょうど逆の操作です
  • 天板を二重にする。もう1枚の天板か、厚手のバットを下に重ねると、底に当たる熱がやわらぎます。底が毎回黒くなるオーブンでは、これがいちばん効きます
  • 紙カップや型で受ける。マフィン用の紙カップや小さな型に入れて焼くと、流れたバターがカップの中にたまり、パンがそれを吸い戻します。底の揚げ焼きは控えめになりますが、漏れと焦げの両方が一度に片づきます

焼き上がったら、天板に残ったバターを刷毛で表面に塗り戻してください。店の塩パンのあの艶は、漏れたバターを戻した艶です。塗り戻す前提なら、少し多めに漏れても損はしません。

焼き上がりの様子 疑う場所 次に焼くときの一手
底がきつね色、中心に空洞 正常 そのまま。天板のバターは表面に塗り戻す
空洞がなく、天板にバターが多い 巻き方 ひと巻き目でバターを包み、両端をつまみ、とじ目を真下に
巻いている途中でバターが柔らかい 冷やし方 棒状に切って冷蔵・冷凍。半分ずつ出して成形
二次発酵の途中でバターがにじむ 二次発酵の温度 30℃前後、35℃を超えない。ひとまわり大きくなれば焼く
底だけ黒く、苦い 天板 シート必須。中段へ、温度10℃下げ、天板二重
毎回焦げる、片づけも大変 受け止め方 紙カップか小さな型に入れて焼く

漏らさず焦がさない、焼く日の段取り

  • 一次発酵のあいだに、巻き込み用の有塩バターを6〜10gの棒状に切り、ラップをして冷蔵庫(夏は冷凍庫)へ
  • 分割・ベンチタイムのあと、生地を細長い三角形にのばす。バターは1本ずつ冷蔵庫から出す
  • 太い端でバターをひと巻きして包み、ふちを押さえる。力を抜いて最後まで巻き、両端をつまむ
  • オーブンシートを敷いた天板に、とじ目を真下にして並べる
  • 二次発酵は30℃前後で40分前後。ひとまわり大きくなったら、オーブンを200℃に予熱する
  • 岩塩を振って、中段で12〜18分。底がきつね色になれば出す
  • 網に移し、天板に残ったバターを刷毛で表面に塗る

よくある失敗と直し方

  • ひと巻き目を押さえたのに全部漏れた:とじ目が上を向いていたか、二次発酵が熱かった。とじ目の向きと発酵温度を先に疑う
  • 冷凍バターにしたら、生地が破れた:角が立ったまま巻いている。冷凍バターは角を指で軽くつぶしてから置く
  • 空洞はあるのに底が揚がっていない:オーブンの温度が低いか、紙カップで焼いている。天板にシートで焼き、予熱を足す
  • 底は焦げるのに上が白い:下火が強いオーブン。天板を二重にし、最後の3分だけ上段に移す
  • 漏れたバターが天板で煙を出す:焦げる手前の合図。次回は温度を10℃下げ、シートの上にもう1枚シートを敷く

漏れる量を決めるのは、自分

塩パンは、バターを「漏らす」ことで底を揚げるパンです。全部漏らせば空洞もバターも失い、まったく漏らさなければ底は揚がらない。その間のどこに着地させるかは、ひと巻き目の押さえ方と、バターの温度と、天板の受け止め方で決まります。次に焼いたら、天板に残ったバターの量を見てください。小さじ1杯ぶんくらいが残り、パンの底がきつね色なら、その日の段取りは当たりです。

参考情報源

カテゴリ パン作り
タグ パン作り基礎 成形・焼成

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